第2話 魔王軍襲来Part1 帝国の城を出て、シルヴァは一人で森へ向かっていた。王バルタスから授けられた光の聖剣ラゼイ――その力を確かめるためだ。 「……一人で行けるか?」王の問いに、シルヴァは迷わず頷いた。 (誰かに守られるだけじゃ、また弟みたいに……失ってしまう) 胸の奥に残る痛みを押し殺しながら、森の入口へ足を踏み入れた。 森は昼間でも薄暗く、木々が影を落としている。鳥の声もなく、静寂が続く。 「魔物の気配……するな」 ラゼイを握る手に力が入る。その瞬間、茂みから黒い影が飛び出した。 ゾンビ型の魔物だ。 「来い……!」 魔物が飛びかかる。シルヴァはラゼイを振り抜いた。 ――光が走る。 斬撃は魔物を一瞬で消し飛ばした。まるで光そのものが形を持ったような鋭い一撃。 「これが……ラゼイの力……!」 手応えを感じたその時――森の空気が変わった。 空気が熱い。重い。息が詰まるほどの圧力。 「……誰だ?」 返事はない。ただ、森の奥から“何か”がゆっくりと歩いてくる音だけが響く。 やがて、木々の間から一人の男が姿を現した。 黒いコート。赤い紋章。そして――拳から立ち上る炎。 男はゆっくりとシルヴァを見下ろした。 「光の聖剣……なるほど。 帝国の新しいおもちゃってわけか」 「……お前は誰だ」 「魔王軍、ブラッド・リーパー。 試しに殺してやろうと思ってな。 光の使い手がどれほどのものか、興味がある」 ブラッド・リーパーは拳を握った。炎が爆ぜ、周囲の空気が歪む。 「まずは軽く……“炎拳”だ」 瞬間、ブラッド・リーパーの姿が消えた。 「速いっ……!」 次の瞬間、炎の拳がシルヴァの腹にめり込んだ。 「ぐっ……!」 衝撃で体が吹き飛ぶ。地面に転がり、息が詰まる。 「弱い。 光の使い手とはいえ、まだ子供か」 ブラッド・リーパーがゆっくり歩み寄る。その一歩一歩が死刑宣告のように重い。 (……また守れないのか? また何もできずに……死ぬのか?) 胸の奥が熱くなった。光が脈打つ。ラゼイが震える。 (違う……俺はもう逃げない!!) 次の瞬間、シルヴァの体から光が溢れた。 「なっ……!」 ブラッド・リーパーが目を見開く。 「俺は……誰も失いたくない!!」 光が爆発し、シルヴァの周囲を包む。瞳が輝き、空気が震える。 「覚醒……か……!」 ブラッド・リーパーが炎をさらに強める。 「ならば……奥義で殺す。 “黒式獄炎拳”」 黒い炎が拳に集まり、森の空気が焼け焦げる。 「光の灯 一撃光閃!!!」 シルヴァはラゼイを握り直し、地面を蹴った。光の斬撃が森を切り裂く。 ブラッド・リーパーは黒炎の拳で迎え撃つ。 ――光と炎がぶつかり、爆発が起きた。 「ぐっ……この力……!」 押されている。魔王軍幹部が、子供の一撃に押されている。 「これで……終わりだ!!」 最後の一撃がブラッド・リーパーの胸を貫き、地面へ叩きつけた。 「……くっ……!」 ブラッド・リーパーは戦闘不能状態となり、動けない。 シルヴァは勝った。だが―― 「はぁ……はぁ……っ……」 覚醒の反動が一気に押し寄せる。視界が揺れ、膝が崩れる。 「……っ……」 倒れ込むシルヴァ。意識が遠のく中、森の奥から新たな影が現れる。 「ブラッド・リーパー……回収に来たぞ」 魔王軍四天王の一人。その圧力はブラッド・リーパーとは比べ物にならない。 「ついでに……そのガキも殺しておくか」 四天王が手を伸ばした瞬間―― 「そこまでだ」 柔らかな声が森に響いた。魔法使い、シャルノットが現れた。 「この子は渡すわけにはいかない」 光の結界が展開され、四天王の攻撃を防ぐ。 「チッ……面倒な奴が来たな。 今日は引いてやる。ブラッド・リーパーを連れて帰るぞ」 四天王はブラッド・リーパーを抱え、闇へ消えた。 シルヴァの意識は完全に途切れた。 こうして、彼の初めての戦いは幕を閉じた。
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