*****この作品はタップorスペースキーで挿絵が変わります。TAP/SPACEと書かれているところに来たら挿絵を変えてください***** キーボードの上を、タップダンスのように指が踊る。 ある日の午後のU-SH GARAGE。一人パソコンを動かすのは、ここの主、上野 隼。 ぶつぶつと、何か呟いているらしい。 「ORBISのホームページには…載ってない…じゃあ…」 検索ボックスに言葉を入力。そしてEnterを、タンッと打つ。 「うーーん…何も出てこない、か…」 その時。 「ん…?」 一件のサイトを見つける。 「これは…?」 クリックしてみた。 数秒の後、現れた画面。そこには、イラストや画像が全くなかった。吸い込まれそうな、真っ黒な背景に、白抜きで書かれた飾り気のない文章が、浮かんでいるだけ。 隼はそこに、目的の文字列を見つけた。 「あ…」 思わず、声が漏れる。ヒュッ、と、自分が息を吸う音が、やけに大きく聞こえる。 目的の文字列。 『幽霊ORBIS』。 その瞬間、背後から音がした。 「こんちは〜」 シャッターを開ける音と、金子 走也の声。 反射的にブラウザを閉じた。 ―――――TAP/SPACE――――― 「…ああ、走也」 平静を装って、それだけ言う。ほんの僅かに、その声が震えていることに、走也は気づかない。 「今日たまたまここに来るのが翔と一緒になりました」 「そうか」 「ちゃす」 黒田 翔が短く挨拶し、走也の後ろから入ってくる。 「何見てたんすか師匠〜」 「別に」 「えー気になる。だよな走也」 「俺も気になる」 「そうか」 「また『そうか』ですか。教えてくれなさそうっすねそのテンションだと。まいいや、100-C応募しました?」 「100-C?ああれか、いやしてない。するつもりもない」 「えー師匠結構あの車似合うと思うんすけど」 「ラグゼリオで充分だ」 「そっすか。あ走也、Tosakaってやつにまた会ってきたんだって?」 「うん。ていうかバッタリだけどな。ガソリンスタンドで一緒になった」 「㍂。なんか喋った?」 「リトラの話から発展してホルムズ海峡の話になった」 「発展しすぎじゃね」 隼が思わずフッと笑う。 「あとなんか、よく分かんないんだけど、車種を特定できない何十年も前の旧車がたまに走ってるのを目撃されることがある、っていう噂」 笑みが消える。 翔はそんな隼に気づかず、話を続ける。 「なにそれ〜」 「いや俺もよく分かんない。ん?」 スボンのポケットが震えていた。 「電話だ。誰だこの番号…ま出てみるか」 通話ボタンを押す。 「…もしもし?」 『バトルをしないか。首都高で』 「……はい?」 『バトルをしようぜ。お前のリトラと、俺のGT-Rで。お前のリトラ、速いんだろ?お前が首都高で、どう走るか。見てみたいんだよ―――金子 走也』 「えっ…、あんたの名前は」 『斗連乃だ』 ―――――TAP/SPACE――――― 走也たちが住む街のはずれ。 一人の若い男がいた。 すぐ、そばに静かに佇むのは一台の、車。 「…」 ボンネットをゆっくり、と撫でる。 その手のひらはボンネットの上を抵抗なくスムーズに動いた。 「…ぁ」 男が細長い首と大きな、眼球を動かす。 不安定な笑みを、 浮かべる。 その、車に語り、かけた。 「あなたは」 目を細める。 「今日も僕の、意志に応えてくれる」 第9話 https://scratch.mit.edu/projects/1321311300/