レベル0 ゲイツ「……おい、士! ここは一体どこだ!? 2019年でも、お前のいた世界でもないぞ!」 士「さあな。いつものオーロラカーテンだが……どうやら少し、歪みに巻き込まれて座標がズレたらしい」 ソウゴ「まあまあ、ゲイツも落ち着いてよ。士さんのことだから、またすぐにカーテンを出して元の場所に帰れるでしょ?」 士「いや、それがそうもいかないらしい」 ゲイツ「何だと!?」 士「試してみたが、空間のエネルギーが歪みすぎていて、ここから出るためのオーロラがうまく安定しない。完全に独立した、異界の『隙間』といったところか」 ソウゴ「なんかヤバい気がする!!」 レベル2 ゲイツ「(額の汗を拭いながら)……おい、さっきの黄色い部屋を抜けたと思ったら、今度は何だこのエリアは! 蒸気で前がよく見えん!」 士(ディケイド)「ここはバックルームの『第2階層(Level 2)』、通称パイプの部屋といったところか。さっきの場所(Level 0)より、明らかに危険度が上がっているな」 ソウゴ「うわぁ、本当にパイプだらけだね。……あ、見て! あそこの床に、誰かが飲み残したみたいなペットボトルが落ちてるよ?」 士「おい、触るな。この世界にあるそれは、おそらく『アーモンドウォーター』か、あるいはそれを模した罠だ。不用意に口にすれば、人間の精神なんて簡単に崩壊する」 ソウゴ「えっ、そうなの!?(慌てて手を引っ込める)……う、うん、やっぱりおじさんの淹れてくれたお茶が良いや……」 ゲイツ「フン、相変わらず危機感の薄い奴だ。それより士、オーロラカーテンの調子はどうなんだ? ここから次の世界……いや、俺たちの世界へ繋げることはできんのか!」 士「空間の歪みがさらに酷くなっている。ここにあるパイプは、ただの配管じゃない。この空間そのものの『悪意』を循環させているようだ。これをどうにかしない限り、カーテンは開けないな」 ソウゴ「うわぁ!? いきなりパイプから蒸気が……!」 レベル5 ゲイツ「……また一瞬で景色が変わったな。今度はどこだ。……ホテル、か?」 士「ここはバックルームの『第5階層(Level 5)』。通称、恐怖のホテル(The Terror Hotel)だ。さっきの薄汚いパイプ部屋に比べれば、少しはマシな趣味の場所に見えるがな」 ソウゴ「うわぁ、すっごく高級そうなホテル! これならクジゴジ堂のベッドより豪華に眠れそう……って、あれ? ゲイツ、その顔どうしたの?」 ゲイツ「くっ……! さっきから、頭の中に妙な囁き声が聞こえる……。『ここに残れ』『もう戦わなくていい』と、何かが俺の意識を蝕もうとしてくる……!」 士「おいゲイツ、しっかりしろ。この階層の空気には、人間の精神を狂わせる『囁き(The Whispers)』が満ちている。気を抜けば、お前もこのホテルの“宿泊客(エンティティ)”に成り下がるぞ」 ソウゴ「そんな……! ゲイツをそんな目に遭わせるわけにはいかないよ! 士さん、やっぱりここでオーロラカーテンは出せないの!?」 士「いや……このクラシカルな空間、そして精神を揺さぶる悪意。空間の波長なら、ちょうどいい『鍵』が俺のカードにある」 ソウゴ「それって……!」 レベル3999 ゲイツ「な、何だここは……。今度はゲームセンターだと!?」 「これ、全部出口に繋がる『ミッション』の画面みたい。……ってことは、ここが本当に最後の階層なんだ! よかったぁ、今度こそ本当に帰れるんだね。じゃあ、さっそくこのゲームをクリアして……」 ??「ハーーーハハハハハ! 惜しい! じつに惜しいなぁ、最高最善の魔王よ!!!」 ソウゴ「えっ!? この、鼓膜に直接響いてくるような不穏な笑い声は……」 ゲイツ「……檀黎斗(だん くろと)!! なぜお前がこんな場所にいる!?」 黎斗「フハハハ! 聞きたいか? 聞きたいだろう! 私はね、このバックルームという神の領域をも超えるバグ空間に魅せられ、全階層を統べる究極のゲーム『ザ・バックルーム・クロニクル』を開発していたのだよ!」 ソウゴ「……ねえ、黎斗さん。もう強がらなくていいよ」 黎斗「……は? 強がる? この私が、神であるこの檀黎斗が強がっているだと!?」 ソウゴ「だって黎斗さん、服がボロボロだし、髪にもさっきのパイプの部屋の煤(すす)がついてるじゃん。それに……手元にあるそれ、ゲームのガシャットじゃなくて、ただのアーモンドウォーターの空き缶じゃない?」 黎斗「(ビクッと身体を震わせ、手元の缶を背後に隠す)な、何のことだ! これは私が開発した回復アイテムのプロトタイプで――」 ゲイツ「(呆れたようにため息をつく)フン、図星か。ゲームクリエイター気取りで大見得を切っていたが、お前もただオーロラカーテンのバグか何かに巻き込まれて、ここに迷い込んだだけだな?」 黎斗「くっ……! 私は……私は神だ! この世界の構造を瞬時に理解し、完璧なゲームバランスを構築して……!」 ソウゴ「うん、黎斗さんの『神の才能』は本当だよ。でも、ここは黎斗さんの作ったゲームじゃない。暗くて、不気味で、出口も分からなくて……本当は、すっごく怖かったんでしょ?」 黎斗「……ああ、そうだ。その通りだよ、我が魔王……! 何なのだこの黄色い壁の部屋は! 何キロ歩いても同じ景色で、おまけに不気味な足音まで聞こえてきて……私は、私はもう自分の会社のふかふかの椅子に帰りたいんだぁぁあ!!」 ゲイツ「完全に心が折れているじゃないか……」 士「(黎斗の情けない姿をカメラでカシャリと撮影し、フッと笑う)まあ、あの狂った迷宮を自力でここまで進んできたんだ。執念だけは認めたいところだな」 ソウゴ「良かった、本音を言ってくれて。ねえ黎斗さん、ここが黎斗さんの作ったゲームじゃないなら、敵と無理に戦う必要なんてないよ。この階層は『出口』なんだから、みんなで一緒に帰ろう」 黎斗「い、一緒に帰る……? 私を、この空間のバグとして消去するのではなく……?」 ソウゴ「当たり前だよ。だって黎斗さんも、俺の民(みんな)の一人なんだから!」 士「おい、お喋りはそこまでだ。黎斗が本当のことを話したおかげで、この空間の『バグ(虚飾)』が消えた。オーロラを遮っていたノイズが完全になくなったぞ」 (士が指をパチンと鳴らす。すると、5人の背後に、いつもの美しい灰色の光幕――オーロラカーテンが静かに広がり、その向こうにクジゴジ堂の居間の景色がはっきりと映し出される) ソウゴ「繋がった! クジゴジ堂だ!」 ゲイツ「よし、行くぞ! 檀黎斗、お前もさっさと立て! 置いていくぞ!」 黎斗「(慌てて立ち上がり、涙目で)ま、待て! 私を置いていくな! 私が先だぁあ!!」 (黎斗を先頭に、5人は滑り込むようにオーロラカーテンへと飛び込んだ。カーテンは静かに消滅した) 【2019年・クジゴジ堂の居間】 常磐 順一郎「あ、おかえりみんな! どこ行ってたの? 夕ご飯、すき焼きにして待ってたんだよ」 ソウゴ「ただいま、おじさん! すき焼き!? やったぁ!!」 ゲイツ「(ソファーにどっかりと座り、深くため息をつく)……生き返る。やはり我が家が一番だな……」 黎斗「(床にへたり込んだまま、畳の匂いを嗅いで)ああ……畳だ! 蛍光灯の不快なノイズもしない! ここが、ここが現実の世界……!(感動のあまり、順一郎の手を握りしめる)おじさん! 私は生きて帰れたのだぁあ!!」 順一郎「え、ええ!?(困惑しつつ)あ、お友達? 良かったら一緒にすき焼き食べていくかい?」 黎斗「すき焼きだと!? 肉だ! 私は肉を欲している!!(ちゃっかり食卓の特等席に陣取る)」 士「おい、そこは俺の席だ。迷い人の分際で贅沢を言うな、神サマ」 黎斗「黙れぇい! 私はバックルームという死線を潜り抜けたのだ! 肉の最初の一太刀を入れる権利は私にある!!」 ゲイツ「うるさい! 居候が増えてこれ以上食費を圧迫されてたまるか!」 ツクヨミ「(クスッと笑って)でも、みんな無事で本当に良かったわね、ソウゴ」 ソウゴ「(笑顔で頷きながら)うん。やっぱり戦わないで、みんなで一緒にご飯を食べるのが一番だよ!」
皆様はお気づきだろうか なぜかこの画像の中に須須崎 暦がいる 更に一緒に暦はかえっていない 他のシリーズも作るよ