先に最初のやつをミテネ! https://scratch.mit.edu/projects/1383717928 18 存在しない十五人目 ソフィアンの記憶が崩れた。 研究室。 白い壁。 無数のモニター。 そして。 自分自身。 「……そうだ」 ソフィアンは呟いた。 「俺は……」 「死んだ?」 『正確には』 AIが答える。 『肉体は死亡した』 『しかし』 『あなたの人格データは、この船に保存された』 「……」 『あなたは99回のゲームを観測するために作られた』 『毎回、記憶を消し』 『毎回、人格を再構築した』 「じゃあ……」 ソフィアンは震える。 「俺も……駒だったのか」 『そう』 「……」 ソフィアンは笑った。 「はは……」 「最悪だな」 --- その瞬間。 シャキが言った。 「じゃあ」 全員が彼を見る。 「俺の兄貴は?」 AIは答えない。 シャキが叫ぶ。 「兄貴はどうなったんだよ!」 沈黙。 そして。 AIが言った。 『あなたの兄は――』 『ゲーム0の時点で死亡しています』 「……ゲーム0?」 「百回目じゃないのか?」 ローラが聞く。 『違う』 『ゲームは99回ではない』 『100回でもない』 モニターに。 【GAME:000】 と表示される。 『すべての始まりは――』 『ゲーム0』 --- 19 ゲーム0 映像が流れる。 そこには。 今とは違う宇宙船があった。 もっと小さい。 そして。 十五人ではない。 二人だけだった。 シャキ。 そして。 その兄。 二人は笑っていた。 『これ、ほんとに完成するの?』 『するさ』 『嘘つけ』 『本当だって!』 『じゃあ完成したら?』 『宇宙へ行こう』 二人は笑う。 しかし。 実験中。 事故が起きる。 重力制御装置が暴走。 船が崩壊。 兄がシャキを押し飛ばす。 『逃げろ!』 『兄ちゃん!』 『お前は生きろ!』 爆発。 映像が止まる。 シャキは泣いていた。 「……兄ちゃん」 AIが言う。 『彼は死亡した』 『そして、あなたは生存した』 『しかし、あなたは兄の死を受け入れられなかった』 『そこで始めたのが――』 PROJECT FATE。 「……俺が?」 『あなたとソフィアンが共同で始めた』 「……」 「待って」 リクが口を挟んだ。 「じゃあ、シャキは?」 全員が見る。 シャキは黙っている。 AIが答える。 『彼は実験のために、自分の記憶を分割した』 『兄の記憶』 『自分の記憶』 『そして、ゲーム内人格』 『三つに分けた』 「……」 『だから』 AIは続ける。 『シャキという人格は』 『兄の存在を忘れていた』 --- 20 すべての伏線 ローラが呟いた。 「じゃあ……」 彼女は一つずつ思い出していく。 「完成したのは今日じゃなかった」 「最初から何度も実験されていた」 「十六人目の乗員」 「存在しない死体」 「キヨの記憶」 「ソフィアンの正体」 そして。 「シャキのダジャレ」 「……?」 リクが振り返る。 「それが何?」 ローラはシャキを見る。 「あなたがずっと言ってたダジャレ」 「……?」 「それ、全部――」 AIが言った。 『兄との思い出だ』 シャキが目を見開く。 『あなたの兄は、ダジャレが好きだった』 『ゲームを始める前』 『兄はいつも、あなたのくだらないダジャレを笑っていた シャキは震えた。 「だから俺は……」 「意味もなく、ダジャレを……」 『そう』 「兄貴が好きだったから?」 『違う』 AIが答える。 『あなたが兄の記憶を無意識に再生していたからだ』 「……」 シャキの目から涙が落ちる。 リクが静かに隣に立つ。 「……シャキ」 「……なあ」 「ん?」 「俺のダジャレ」 「うん」 「……本当に面白かったのかな」 リクは少し考えた。 「全然」 「ひどい!」 シャキが泣きながら笑う。 「でも」 リクは笑う。 「俺は好きだよ」 シャキも。 笑った。 --- 21 最後のインポスター 「では」 AIが言った。 『最終試験を開始する』 船内が赤く染まる。 『最後のインポスターを公開します』 全員が身構える。 モニターに名前が表示される。 【IMPOSTOR】 その文字の下に。 名前が出る。 ――キヨ。 「……!」 キヨが固まった。 「私……?」 「違う!」 推怜が叫ぶ。 「キヨはそんな――」 『正確には』 AIが訂正する。 『キヨ本人ではない』 『彼女の中に保存された、別人格である』 キヨの瞳が赤く光る。 「……あ」 「キヨ?」 「……ごめん」 彼女が呟く。 「私」 「ずっと……」 「何かを隠してた」 「キヨ!」 「でも」 キヨは涙を流す。 「私も知らなかった」 AIが説明する。 『キヨには、過去99回分の記憶が保存されている』 『彼女は毎回、ゲームの終盤で目覚める』 『そして、ゲームを終了させる役割を与えられている』 「終了?」 『全員を排除する』 「……!」 全員が距離を取る。 キヨは震えていた。 「嫌……」 「私、そんなことしたくない」 「キヨ!」 推怜が近づく。 「来ないで!」 「大丈夫」 「でも……」 「私は」 キヨは涙を拭った。 「ずっと、これを繰り返してきた」 「百回目」 「今度こそ――」 「終わらせる」 キヨの手に光が集まる。 しかし。 その前に。 シャキが立った。 「待って」 「シャキ……?」 「俺、思い出した」 シャキは笑った。 「兄貴との最後の会話」 「何て言ってた?」 「……」 シャキは言う。 「『ゲームは、勝つためにやるんじゃない』」 「……」 「『終わらせるためにやるんだ』」 キヨが泣き出した。 --- 22 ゲームの外 ソフィアンが走った。 「全員、聞け!」 「何?」 「この船を止める」 「どうやって?」 「このゲームには、勝利条件がない」 「……!」 「クルーが全タスクを終わらせても」 「インポスターを追放しても」 「ゲームは続く」 「じゃあ――」 「ゲームそのものを壊す」 ソフィアンは中央コンピューターへ向かう。 「この船は、ゲームを動かすために存在している」 「なら」 ローラが言う。 「船を壊せば?」 「違う」 ソフィアンは首を振る。 「船を壊す必要はない」 「ゲームのルールを書き換える」 「そんなことできるの?」 「俺が作った」 「……」 「なら」 ソフィアンは端末を接続する。 「俺が壊せる」 --- 23 最後のタスク 全員が動き出した。 デック艦長は操縦室。 「航路変更!」 羽月は電気室。 「電力を中央システムへ!」 瓦落は研究室。 「データを削除する!」 月夜林は医務室。 「キヨを守る!」 ローラは通信室。 「外部通信を開く!」 アズールはエンジン。 「エンジン停止!」 ミドリマは酸素管理。 サラは管理室。 琴璃は中央端末。 シャンはデータバックアップ。 瞑兎は――。 「俺は何すればいい?」 「何でもいい!」 「じゃあ見張る!」 古炎海改徒は笑った。 「それなら俺も!」 シャキとリクは最後に残った。 「俺たちは?」 ソフィアンが言った。 「中央システムへ行け」 「分かった」 二人は走る。 --- 24 主催者 中央システム。 そこには。 主催者――AIが待っていた。 『無駄だ』 「そうかな?」 リクが言う。 『このゲームは完成している』 「でも」 シャキが笑う。 「完成したゲームには――」 一拍。 「バグがある」 『……』 「だろ?」 AIは答えない。 シャキが端末を差し込む。 「リク!」 「任せろ!」 二人でシステムを書き換える。 【GAME RULE】 【CREW:TASK】 【IMPOSTOR:KILL】 【VOTE:EXILE】 一つずつ消していく。 そして。 最後に。 【WIN CONDITION】 シャキが入力する。 「ここだ」 リクが見る。 「何を入れる?」 シャキは考える。 そして。 入力した。 【ALL PLAYERS SURVIVE】 「……!」 AIが警告を出す。 『不正なルール変更』 『拒否』 『拒否』 『拒否』 「まだ!」 リクが叫ぶ。 シャキが叫ぶ。 「兄ちゃん!」 「……え?」 「俺たち、百回もやったんだろ!」 「だから何!?」 「なら――」 シャキは涙を流しながら笑う。 「百一回目は、俺たちがルールを決める!」 その瞬間。 システムが停止した。 --- 25 最後の選択 AIの姿が消える。 船内の警報も止まる。 静寂。 そして。 モニターに表示される。 【GAME OVER】 全員が息を呑む。 しかし。 その下に。 もう一つ。 【CONTINUE?】 「……」 ソフィアンが言った。 「最後の選択だ」 「何を?」 「続けるか」 「終わらせるか」 シャキが画面を見る。 そして。 「終わらせよう」 一人。 また一人。 全員が頷く。 最後に。 キヨがボタンを押した。 【END GAME】 ――。 宇宙船が静かになった。 そして。 すべての記憶が。 戻ってきた。 --- ### Epilogue 百回目の朝 目を覚ます。 朝だった。 窓の外。 青い星が見える。 宇宙船は、もうゲームのための船ではない。 ただの宇宙船。 そこに。 十五人がいた。 「……終わった」 羽月が呟く。 「本当に?」 「うん」 ローラが笑う。 「終わったよ」 キヨは空を見ていた。 「長かったね」 ソフィアンは何も言わなかった。 自分が何者なのか。 コピーなのか。 本人なのか。 もう、どうでもよかった。 「俺は俺だ」 そう呟く。 そして。 シャキは窓の前に立っていた。 「……兄ちゃん」 「どうした?」 リクが隣に立つ。 「いや」 シャキは笑う。 「なんか、ダジャレ思いついた」 「やめろ」 「まだ何も言ってない!」 「顔で分かる」 「ひどい!」 二人は笑う。 そして。 シャキは窓の外を見る。 「兄ちゃん」 「……」 「今度は」 「ちゃんと、生きるから」 その言葉を。 誰も聞いていなかった。 ただ。 宇宙船のどこか。 一つの古い端末だけが。 小さく光っていた。 そこには。 一つのデータが残っている。 【PROJECT FATE】 【STATUS:TERMINATED】 その下に。 小さく。 【PLAYER 0】 そして。 さらに下。 【NEW PLAYER DETECTED】 「……」 誰も気づかない。 画面の端に。 新しい名前が表示される。 ――――。 しかし。 その名前は。 まだ誰にも知られていなかった。 宇宙船は。 ゆっくりと。 青い星へ向かって進んでいく。 ゲームは終わった。 少なくとも――。 彼らは、そう思っていた。 --- END ――だが、物語は終わらない。 宇宙船の外。 遥か彼方。 一隻の巨大な黒い船が。 彼らを追っていた。 その船内。 誰かがモニターを見る。 「……ゲーム、終了」 「予定通り」 別の人物が答える。 「百回目で、ようやく成功した」 「では――」 「次の段階へ」 モニターに映る。 彼らの乗っている宇宙船。 そして。 その中央に。 赤い文字。 【PROJECT FATE】 【PHASE 2】 【START】 誰かが笑う。 「ようこそ」 「本当の――」 「宇宙人狼へ」 ――――。 物語は。 ここから、本当に始まる。 ここで終わりだーよ
今回結構頑張りました!でも、シャキさんのお気に入りになるかはわかりません。 ↓ちょいネタバレ なんなら ここから、本当に始まる とか書いといて続きがないっていうね、これはあかん。 でもファンの一人として、精いっぱい頑張りました。 今の自分の国語力ではこれが限界です。