「ワトソン君、一体犯人は誰だと思うかね?」 「だぁかぁら!家辺さん!ワトソンて呼ぶのやめてくださいって何度言えば!いいんですか!いくら私の名字が和戸で、名前が素音だったとしても!ワトソンじゃないんですからね!わど、そのん!」 「で、誰だと思うかね?ワトソン君。」 「私の話聞いてましたか!?」 いつになったら和戸、もしくは素音呼びになるのだろうか、そう希望のない希望は一度頭の隅にどかして、犯人を考える。 「刑事さん、大薙さんでしたっけ?あの人が言う容疑者、九字路は金に困っていた、精神状態は不安定だった、害者に対して憎悪の感情があった、その他諸々の怪しい行動がこれ見よがしに満載。普通なら誰もが九字路が犯人で間違い無いと思うでしょう。ですが、あまりにも露骨すぎる。さらに彼は聞き込み調査などでもわかるように、相当に頭がいい。じゃあなんでわざわざこんなにもわかりやすく?精神状態が不安定だったとはいえここまで証拠を振り撒くとは思えません。」 「そう、つまり裏に誰かがいると言うことだ、が。」 「ええ、指示を受けており、そのままに実行したとしても作戦の穴を自身で修正するくらいのことはするでしょう。なので、」 「犯人は九字路が犯人に見えるように仕向けたと言うことだ。」 「ですが犯人はここまで巧妙な作戦を考えたのに、肝心なところを忘れていた。九字路の現在の様子を。犯人は九字路が留置場にいるのにも関わらず、またコトを起こした。つまり、それほど近しくはないが、九字路の周囲のことをある程度知っているやつが怪しい。」 「Perfect!お見事!その通りだ。つまり犯人は九字路の友人、礫条だ!さあこうしちゃいられん今すぐにとっちめに行くぞワトソン!」 「だぁっから!和戸です!素音です!ワトソンじゃありませんったら!」 そうして家辺さんはデスクに置かれたS&W M10を取った。それにしてもいつまであんな古臭いリボルバーを使うつもりだろうか。付き合わされる身からすればさっさと自動拳銃に変えてほしい。 私も腰にグロックがちゃんといることを確認して部屋を出る。 そしてこれまた古臭い家辺さんのユーノスロードスターに乗って、犯人の元へ向かう。道中私はこう言った。 「それにしても、2年前の「防犯市民銃器所持特区法」はすごい悪法ですよね。」 2年前の国会で、ある議員の発言がSNS上で炎上し、政治家がそれをネタにし、またSNSは喜んでエサにし、それをまた政治家が取り上げる。そしてついに一線を超えた投稿が現れ、社会現象となった。 「『民間人に銃を』、これのおかげで俺たちがどれだけ楽になり、そしてまた苦労したことか。そう言いたいんだな。」 「ええ、これまでにも銃を持った犯人はいましたが、どれも自作銃に、中国から横流しされた粗悪品、戦場跡地で拾われたイカれポンチ。特に大きな脅威ではなかったと言うのに、銃の所持の制限が緩和されたせいで相手がピストルを持つのは当たり前、ひどい場合はミニガン持ってたりしますからね。」 最初は許可の拡大した業種の者が犯罪に手を染めたものが多かったが、ある時期を境にそこら辺のヤクザも銃を持つようになった。 「確かに、あれは驚いた。でもあの事件さえなければな。」 あの事件、蜂の巣事件、防犯市民銃器所持特区法が施行された9ヶ月後、名古屋の中心部で大学生がミニガンを白昼堂々ぶっ放した事件である。ちょうど私たちが名古屋旅行に行ってる時に起こるもんだから本当に迷惑だった。 「と言うことで、家辺さん、いつなんとき短機関銃を撃ちまくるイカれ野郎が出てくるかわかりません。なんなら自動小銃を持ったやつとかもそろそろ増えてくる頃合いですよ?家辺さんもせめてそろそろグロックに持ち替えましょう。私のみたいに好きなようにカスタムしてあげますから。」 「やなこったい、俺はこいつじゃなきゃ生きてられねえ。それと、女の子がイカれ野郎とかそんな言葉を使うもんじゃありません。」 「いきなり説教ですか?そもそも私を女として見てないくせに。」 「それは語弊のある言い方だね?家出して東京まで出てきて、無計画だったが故に路頭に暮れて、そんなかんやいたら家の辺り一帯が爆破テロに遭って、本格的にどうしようもなくなったところを拾ってやったのはどこの誰だと思ってる。14から育ててるやつに恋愛感情なんて湧くもんか。」 「ああーああー、その話は聞き飽きた!いいですよ!別に、私はいつまでもあなたの助手ですよ。自立なんてできるわけもない19の馬鹿娘ですよ!」 本当にこの人と言ったら、私の気持ちなんて考えたこともないくせに。確かに歳だって8は離れてるけどそれでも私は、私は。やっぱやめだ。これ以上は本当に、馬鹿みたいだ。
短編小説集 断編 作 はる 表紙画 はる 次話→ https://scratch.mit.edu/projects/1383084275/ 前話→ https://scratch.mit.edu/projects/1382213436/ あとがき やっべぇ、最初に思ってた話よりも結構デカくなった。ついでに主題どっか消え去った。あと知らん間に恋愛要素が紛れ込みやがった。なんてこったい。 て言うか普通にこの二人の続き書きたい。 て言うか前編後編に分けるべきボリューム。 て言うか眠い。(←寝ろ) もしかしたらこの二人の話に続きができるかもね。恋愛に推理と両方ともまだ書いたことのない未知のジャンルだからうまく行くかは未知数だが。 いやでも本当に書きたい。もしかしたらそのうちしれっと出てくるかもね。 H38/09/20/00:20 H38/09/23/01:32 追記 カクヨムに投稿の際に、タイトルを 「ある探偵事務所にて」 に変更しました。