※注意 下記の小説にはいじめの表現があります 1サビ付近でいろいろな効果をかけています 苦手な方はご注意ください クラス全員からシカトされる毎日に逃げ込んだカフェで唯だけが私の手を握ってくれた。 唯は淡い黄色いカーネーションを私にくれた。 「海外では友情の意味もあるんだよ」 という言葉を私は宝物のように信じ切っていた。 唯はスマホを構え花を持つ私の写真を撮った。唯の優しい笑顔だけが私の壊れそうな世界を繋ぎ止めていた。 でもいじめは『加速』した。 誰にも言っていない秘密がクラスの裏アカで次々暴露されていく。 おかしい。 どうして。 静寂を破って私のスマホが震えた。画面には唯の名前。 震える指で通話ボタンを押し耳に当てた。 [70秒]。 あまりにも冷酷な受話器の向こうの静寂。 世界がぐにゃりと歪み急速に血のような赤と黒へ反転していく。 スマホの向こうから完全に冷え切った唯の声が聞こえてきた。 『こんばんは、ねぇ、知ってる?』 パッと視界のモヤが晴れた瞬間私は目撃してしまった。 私の隣でずっと優しそうに微笑んでいたはずの唯の「本当の顔」を。 目は冷酷に据わったジト目に変わり私を見下している。 その口元は最初から全部知っていたと言わんばかりに歪んで私をあざ笑っている。 私を救ってくれる大人はどこにもいなかった。 『花言葉の本当の意味は軽蔑。』『あのアカウントの言葉も唯の冷たいジト目も全部が私を地獄へ突き落とすための台本』 もう涙も出ない。翌日私は最後の力を振り絞って職員室へ向かい唯の裏アカの画面を先生に突きつけた。 けれど、先生はパソコンから目を離さないまま私のスマホを一瞥しただけだった。 先生のデスクの端には埃を被りカサカサに乾いた死んだドライフラワーが置かれている。 『ネットの書き込みなんていくらでも偽造できるからね。』『君の被害妄想じゃないかな。』 先生の声はその枯れ木と同じくらい冷酷で血が通っていなかった。 私を救ってくれる人はこの学校には、世界には誰もいない。もう何も聞こえない。 私は無言で荷物を鞄に詰めた。 机の奥にあの黄色いカーネーションを押し込んだ。 すっかり萎びて黒ずんだ死んだお守り。 これだけはここに置いていこう。 鞄のジッパーを閉め教室の引き戸を閉めるとき、振り返ることはしなかった。 通路を歩く私の背後で夕暮れの下校チャイムが鳴り響いた。 それは私を送り出す音ではなく、私がこの場所から完全に消去されたことを告げる冷たい合図だった。
無意識レクイエム/森羅万象 公式 音源/@xaphotan様 https://scratch.mit.edu/projects/397728671