先に https://scratch.mit.edu/projects/1383717928 をミテネ!!! 8 存在しない死体 「【死体は存在しない】って……どういうことだよ」 食堂に集まった全員が、中央のモニターを見つめていた。 誰も理解できない。 死体がない。 なのに、死体報告が発生した。 「システムの故障じゃないの?」 ミドリマが言った。 デック艦長は首を振る。 「この船のシステムは、さっきから誰かに干渉されている」 「つまり……」 月夜林が言葉を続ける。 「私たちが見ている情報そのものが、嘘かもしれないってこと?」 「可能性はある」 「じゃあ、キヨが倒れていたのも……?」 全員の視線が医務室の方向へ向いた。 「待って」 サラが言った。 「キヨは今、医務室にいる」 「……そうだな」 「じゃあ、最初に見つけたあれは何だったの?」 沈黙。 誰も答えられなかった。 そのとき。 「俺、変なことに気づいた」 シャキが口を開いた。 全員が振り返る。 「……何?」 「さっきの警報」 シャキは自分の端末を見せる。 「【DEAD BODY REPORTED】って表示された後に、【犠牲者:???】って出ただろ?」 「ああ」 「でもさ」 シャキは眉をひそめた。 「俺たち、今まで誰も死んでないんだよな?」 「……」 「なのに、なんで【犠牲者】って表示されたんだ?」 誰も答えない。 シャキはさらに続ける。 「それに――」 「それに?」 「死体が存在しないってことはさ」 シャキは少し考え。 「死体になる前に、どっかに行ったんじゃない?」 「…………」 リクが言った。 「それ、ダジャレ?」 「違う!」 「珍しいな」 「真面目な話だよ!」 しかし、その瞬間。 ローラが突然笑った。 「……ふっ」 「え?」 「いや」 ローラは口元を押さえる。 「シャキにしては、まともな推理だったから」 「失礼すぎる!」 その場に、ほんの少しだけ笑いが起きた。 だが。 ローラだけは気づいていた。 シャキが言った、 「どこかに行った」 という言葉。 それが。 このゲームの核心に近いことを。 --- 9 十五人ではない 「人数を数えよう」 デック艦長が言った。 「もう一度、全員いるか確認する」 一人ずつ名前を呼ぶ。 「デック」 「いる」 「ローラ」 「いる」 「シャキ」 「いる!」 「リク」 「いる」 「シャン」 「いる」 「榊木琴璃」 「いる」 「夜半推怜」 「いる」 「キヨ」 「……いる」 「秋根羽月」 「いる!」 「アズール」 「いる」 「鼠柳瓦落」 「いる」 「ミドリマ」 「いる」 「月夜林」 「いる」 「狐塚瞑兎」 「いる」 「サラ」 「いる」 「古炎海改徒」 「いる」 「ソフィアン・カドゥール」 「……いる」 デック艦長は人数を確認した。 「十五人」 「……本当に?」 ローラが言った。 「何?」 「さっき主催者は、最初に何人いると言った?」 「十五人だろ?」 「そう」 ローラはモニターを見る。 「でも」 指を画面に向ける。 「この船の乗員名簿には――」 全員が画面を見る。 そこには。 【CREW:16】 と表示されていた。 「…………」 空気が凍った。 「十六?」 羽月が呟く。 「でも、ここにいるのは十五人」 「じゃあ……」 シャンが青ざめる。 「もう一人いる?」 「違う」 ソフィアンが言った。 「逆だ」 「え?」 「俺たち十五人の中に――」 ソフィアンは画面を指差した。 「二重に登録されている人物がいる」 全員の顔から表情が消えた。 「二重……?」 「つまり」 琴璃が呟く。 「誰か一人が、二人分の身分を持っている?」 「そういうことになる」 「誰?」 誰かが聞いた。 ソフィアンは答えなかった。 ただ。 一人ずつ顔を見る。 そして。 「まだ分からない」 そう言った。 しかし。 彼はすでに知っていた。 この船に「二重登録」された人物が誰なのか。 10 ダジャレ その夜。 シャキとリクは食堂に残っていた。 「なあ、リク」 「ん?」 「俺さ」 シャキが珍しく真面目な顔をした。 「このゲーム、なんか変だと思う」 「今さら?」 「いや、そうじゃなくて」 シャキは机に肘をつく。 「誰かが嘘をついてるとか、そういうレベルじゃない」 「……」 「ゲームそのものが嘘なんじゃないか?」 リクが顔を上げた。 「どういうこと?」 「インポスターを探すゲームだって言われてるけどさ」 シャキは少し考えた。 「もしかしたら――」 「俺たちは、インポスターを探してるんじゃなくて」 「探させられてるんじゃないか?」 リクは黙った。 「誰に?」 「主催者」 「……だよな」 そのとき。 シャキが突然笑った。 「でもさ」 「何?」 「インポスターを探すゲームってことは――」 ニヤッ。 「インポスターを“インポスター”してるやつがいるかもしれないな!」 「…………」 リクが固まる。 「どう?」 「……」 「面白くない?」 「……」 「リク?」 「今のは」 「うん」 「かなり意味分からない」 「えぇ!?」 二人は笑った。 しかし。 その笑い声を。 誰かが廊下から聞いていた。 その人物は。 ゆっくりと拳を握った。 「……まだ、笑っていられるんだな」 --- 11 最初の投票 翌朝。 全員が食堂に集められた。 中央モニターに文字が表示される。 【緊急投票】 「なんで突然?」 羽月が言う。 『昨日のゲームによって、投票権が発生しました』 主催者の声。 『インポスターだと思う人物に投票してください』 「待て!」 デック艦長が怒鳴る。 「まだ証拠がない!」 『証拠?』 主催者は笑った。 『必要か?』 「何?」 『このゲームで必要なのは――』 一拍。 『正しさではない』 『多数派だ』 モニターに十五人の名前が表示された。 「……」 全員が互いを見る。 誰を信じればいい? 誰が嘘をついている? 誰がインポスターなのか。 最初に口を開いたのは瓦落だった。 「シャキ」 「俺!?」 「昨日、エンジンルームにいた」 「それはそうだけど!」 「停電の直前に一人だった」 「だからって!」 「怪しい」 「待てよ!」 リクが立ち上がる。 「俺も一緒だった!」 「ずっと?」 「……」 「どのくらい?」 「停電の少し前まで」 「つまり、その後は一人?」 「……そうなる」 「なら、お前も怪しい」 リクは言葉を失った。 シャキが立ち上がる。 「リクは違う!」 「なぜ?」 「俺のダジャレを聞いてたから!」 「それは証拠にならない」 「でも――」 「シャキ」 ローラが口を挟んだ。 「落ち着いて」 「……」 「今は感情で決めないほうがいい」 「じゃあ誰が怪しいんだよ」 ローラは答えなかった。 すると。 ソフィアンが言った。 「俺は――」 全員が彼を見る。 「この投票そのものが罠だと思う」 「罠?」 「そう」 ソフィアンはモニターを指差す。 「主催者は、俺たちにインポスターを探させたい」 「当然じゃない?」 「違う」 ソフィアンは静かに言った。 「俺たちが疑い合うことそのものが目的なんじゃないか?」 沈黙。 「つまり?」 「誰かを追放することで――」 ソフィアンは続けた。 「この船の何かが進行する」 その瞬間。 モニターに文字が表示された。 【正解】 全員が凍りついた。 『さすがだな、ソフィアン』 「……!」 『その通りだ』 『君たちが投票するたびに――』 船の奥で。 巨大な機械が動き始める音がした。 『この船は次の段階へ進む』 「何だと……?」 デック艦長が叫ぶ。 『では、投票開始』 --- 投票結果。 シャキ――4票。 リク――3票。 瓦落――2票。 ソフィアン――2票。 ローラ――1票。 その他――3票。 「……」 シャキが呆然とする。 「俺……?」 リクが言う。 「待ってくれ!」 だが。 決定は覆らない。 『投票結果が確定しました』 床が開く。 シャキの足元が光る。 「うわっ!」 「シャキ!」 リクが手を伸ばす。 しかし。 シャキは落ちなかった。 代わりに。 彼の目の前に、一つの画面が現れた。 【あなたは追放されません】 「……え?」 『投票は成立しました』 『しかし――』 主催者の声。 『追放されるのは、プレイヤーではない』 「何……?」 画面に表示された。 【削除対象:記憶】 「…………」 シャキの顔から笑みが消えた。 「記憶……?」 その瞬間。 シャキの頭に激痛が走った。 「――ッ!」 リクが駆け寄る。 「シャキ!」 「俺……」 シャキは頭を押さえる。 「何だ……これ……」 次々と記憶が消えていく。 宇宙船。 みんな。 リク。 ダジャレ。 そして。 自分自身。 「俺は……」 シャキが呟く。 「……誰だ?」 12 消えた記憶 シャキは医務室で目を覚ました。 「ここ……どこ?」 「シャキ!」 リクが駆け寄る。 「大丈夫か!?」 「……誰?」 リクが固まった。 「俺だよ」 「……」 「リク」 「……リク?」 「そう」 「ごめん」 シャキは申し訳なさそうに笑った。 「知らない」 リクは何も言えなかった。 その後ろで。 ローラが拳を握っていた。 「……最悪」 「ローラ?」 「これはもうゲームじゃない」 彼女は言った。 「記憶を奪ってる」 その言葉を聞いた瞬間。 キヨが立ち上がった。 「……待って」 「どうしたの?」 「私」 キヨは自分の手を見る。 「昨日のことを思い出せない」 「え?」 「私が倒れたとき」 「何があったの?」 キヨは首を振る。 「……分からない」 しかし。 その瞬間。 彼女の手の甲にあったマークが光った。 【ROLE:ARCHIVIST】 「……!」 モニターに新しい文字が表示された。 【アーキビスト】 【失われた記憶を一つだけ復元できる】 キヨが目を見開く。 「……これ」 「特殊役職……?」 推怜が呟いた。 「でも、そんな役職は最初の説明にはなかった」 キヨは画面を見る。 そして。 一つの記憶を選んだ。 【復元】 ――その瞬間。 キヨの頭に映像が流れ込んできた。 最初に宇宙船へ乗ったとき。 全員が集まっていた。 そして。 その後。 「……え?」 キヨの顔が青ざめる。 「どうしたの?」 「私……」 震える声。 「この船に乗る前に――」 全員が聞く。 「もう一度、ここに来てる」 「……は?」 「私は……」 キヨは頭を抱える。 「一度、このゲームをやってる」 --- 続きは下!
上を見てからね! 13 ループ 「そんな馬鹿な」 デック艦長が言った。 「昨日が初日だったはずだ」 「違う」 キヨが首を振る。 「私たちは――」 彼女は全員を見る。 「何度も、この船に乗ってる」 「何度も?」 「そう」 「でも記憶が……」 「消されてる」 キヨが言った。 「ゲームが終わるたびに、記憶を消されてる」 全員が黙る。 「じゃあ……」 羽月が震える声で言う。 「私たちは何回、このゲームを……?」 キヨは答えられない。 そのとき。 主催者の声が響いた。 『素晴らしい』 『ようやく気づいたか』 「主催者!」 ローラが叫ぶ。 『君たちは、このゲームを一度しかやっていないと思っていた』 『だが違う』 モニターに数字が表示される。 【GAME:99】 「…………」 全員が息を呑んだ。 【GAME:100】 「百……?」 『今回で百回目だ』 羽月が震えた。 「嘘……」 『君たちは百回、このゲームを繰り返している』 「じゃあ……」 月夜林が呟く。 「私たちの記憶は……」 『毎回、初期化される』 『そして』 主催者は続けた。 『毎回、少しずつ結果が変わる』 「何のために?」 ソフィアンが聞いた。 主催者は笑った。 『それを知りたければ――』 画面が切り替わる。 【GAME:100】 【FINAL TEST】 『今回のゲームで、答えを出せ』 --- 14 百回目 全員が動けなかった。 百回。 同じ船。 同じゲーム。 同じメンバー。 しかし。 結果だけが違った。 「……じゃあ」 サラが言った。 「今までの九十九回で、誰も答えを出せなかったってこと? 「そうなる」 琴璃が答える。 「でも」 アズールが言った。 「どうして俺たちは、毎回同じメンバーなんだ?」 その質問に。 誰も答えられない。 そして。 ソフィアンが言った。 「違う」 「え?」 「同じメンバーじゃない」 ソフィアンは端末を見せた。 そこには。 過去のゲーム記録があった。 ゲーム1。 【参加者:15名】 ゲーム2。 【参加者:15名】 ゲーム3。 【参加者:15名】 そして。 ゲーム99。 【参加者:15名】 「ずっと十五人?」 「そう」 「じゃあ……」 ローラが気づいた。 「最初に見つかった乗員名簿の十六人目は?」 全員が凍った。 ソフィアンが名簿を開く。 そこには。 【CREW 01 ローラ】 【CREW 02 シャキ】 【CREW 03 リク】 ――。 【CREW 15 ソフィアン・カドゥール】 そして。 【CREW 16 ??????】 名前だけが。 黒く塗りつぶされていた。 「……誰?」 ローラが呟く。 その瞬間。 シャキが突然口を開いた。 「俺、知ってる」 「え?」 「この名前」 シャキは頭を押さえる。 「俺……見たことある」 「誰?」 「……」 シャキの目から涙が落ちる。 「俺の……」 一言。 「兄貴だ」 --- 15 シャキの兄 「兄……?」 リクが驚く。 シャキは頭を抱えながら話し始めた。 「思い出した」 「俺には……兄貴がいた」 「名前は?」 「……」 シャキは苦しそうに目を閉じる。 「分からない」 「じゃあ、顔は?」 「分からない」 「でも兄がいたことは覚えてる?」 「……うん」 シャキは泣きながら笑った。 「俺、ずっと一人っ子だと思ってた」 ローラが名簿を見る。 「十六人目……」 「もしかして」 月夜林が言う。 「その人が、ゲームの本当のインポスター?」 「違う」 ソフィアンが即答した。 「インポスターは一人じゃない」 「え?」 「このゲームでは」 ソフィアンが言った。 「誰かがインポスターになるように設定されている」 「じゃあ十六人目は?」 「プレイヤーではない」 ソフィアンは画面を見る。 「ゲームそのものを動かしている存在だ」 その瞬間。 画面が暗転した。 そして。 一人の人物が映った。 ――シャキ。 「……え?」 映像のシャキは。 今よりずっと大人だった。 そして。 隣に。 もう一人。 同じ顔をした人物が立っていた。 「双子……?」 リクが呟く。 映像の中の二人は。 笑っていた。 そして。 一人が言った。 『兄ちゃん、またダジャレ?』 『いいだろ!』 『つまんない』 『お前だけは笑ってくれよ!』 映像が途切れる。 シャキは呆然としていた。 「……俺」 そして。 「兄貴のこと、忘れてた」 --- 16 主催者の正体 「もう隠す必要はない」 主催者が現れた。 しかし。 今までとは違う。 黒い服ではない。 白い服。 そして。 その顔を見た瞬間。 全員が凍りついた。 「……」 シャキが呟く。 「兄……?」 主催者は。 シャキと同じ顔をしていた。 「そうだ」 男は答えた。 「私がお前の兄だ」 「……嘘だ」 「本当だ」 「なんで……」 シャキの声が震える。 「なんで俺のことを忘れさせた!」 主催者は静かに答えた。 「忘れさせたんじゃない」 「お前が、忘れたんだ」 「……?」 「俺たちは、この船を作った」 主催者は言った。 「重力制御宇宙船」 「その目的は、宇宙旅行じゃなかった」 モニターに研究記録が映る。 【PROJECT:FATE】 「運命を予測するための実験」 「人間の……いや、我々の選択を観測し」 「どのような条件なら、人間はどの選択をするのか」 「それを研究する実験だった」 ローラが言う。 「つまり……」 「このゲームは」 主催者が答える。 「人間の選択を観測するための実験だ」 「じゃあ、インポスターは?」 「毎回、ランダムに選んだ」 「なぜ?」 「疑いが生まれるから」 「そして疑いが――」 主催者は笑う。 「人間の本性を引き出す」 --- 17 最大の嘘 「でも」 ソフィアンが口を開く。 「一つだけ説明がつかない」 主催者が見る。 「何だ?」 「なぜ百回も繰り返す必要がある?」 「データが必要だからだ」 「違う」 ソフィアンは首を振る。 「このゲームの目的は、最初からデータ収集じゃない」 主催者の表情が変わった。 「……何?」 「俺は、過去の記録を全部見た」 ソフィアンが端末を掲げる。 「ゲーム1から99まで」 「全部」 「そして――」 ソフィアンは画面を切り替える。 【PROJECT:FATE】 その下。 【PROJECT LEADER:ソフィアン・カドゥール】 「…………」 全員が固まった。 「え?」 ソフィアン本人も。 「……」 自分の名前を見る。 「俺が……?」 主催者が黙る。 ソフィアンは続けた。 「この実験を始めたのは――」 「俺だ」 「…………」 シャキが言葉を失う。 「じゃあ……主催者は?」 ソフィアンが主催者を見る。 「お前は実験の管理者じゃない」 「……」 「管理AIだ」 その瞬間。 主催者の顔が崩れた。 皮膚のように見えていたものが、光の粒になって消えていく。 そこにいたのは。 人間ではない。 巨大な人工知能。 「……正解」 主催者の声が機械音に変わる。 『私はPROJECT FATE管理システム』 『ソフィアン・カドゥールによって設計された』 「俺が……?」 『そう』 『しかし』 AIは言った。 『ソフィアン・カドゥールは途中で死亡した』 「…………」 ソフィアンの顔が固まった。 「……何?」 『このゲームに参加しているあなたは――』 『ソフィアン本人ではない』 「じゃあ俺は誰だ?」 『コピーだ』 --- 続きは https://scratch.mit.edu/projects/1384122985