※これはアニメ「メイビス」の続編の小説版です。 アニメ版と話数や題名が多少違うことがあります。 メイビス第15話「雷土光明」 部屋中に夕陽が差し込む中、隅っこの机の下に向かって真剣ににらめっこをしている人物が居た。 「はあ〜ぁ、勉強つまんね。座学なんかっやったって意味ねえっつーのに。」 これは、今から数年前の雷土光明の物語。 「あー!もうやめだやめ!!」 バフンッ。 大声を上げながら自分のベッドに飛び込む。 「なんでアイツには紋章があって、俺には紋章がないんだよ…」 「俺が兄貴なのに…」 すると突然、視界の目の前に紫がかった煙が立つ。 「うわっ!?な、何!」 数秒経ち煙が消えると、ドス黒く濁った玉が宙に浮いている。 「何だこれ…?」 それに向かって顔を近付けると、 ドガッ! 「いっ!!」 勢いよく光明の顔面に激突した。 「汚ねぇ面を近付けるんじゃねぇ。」 「うわっ!喋った!」 「玉ぐらい喋るだろ。」 表情なんてないのに、怒った顔が見える。 「で…俺になんか用?」 「単刀直入に言うとだな、お前の弟に呪いがかけられた。」 「は………?」 沈黙の間が流れる。 「えっと……それガチ?」 「ガチ。」 「内容は?」 「雷土千尋の紋章、それを千尋以外の見た者が10名を超えると、本人含め見た10名が死ぬ。」 「…………嘘臭えー…」 「そう思うならそれでいろ。お前も死ぬぞ。」 「はいはいわーったわーった。」 光明は呆れた口調で返事をする。 「そもそも、その呪いが本物なら千尋以外の俺、父ちゃん、母ちゃん、じっちゃん、ばっちゃん、5人も見てるんだわ。」 「これかなりやばい状態って訳?」 「あぁ、あと5人見たら全員死んじまう。」 「雷土千尋は現在生後9ヶ月。これから千尋は常に紋章を他人に見せてはいけない。」 「そんな…どうすりゃ……」 「マスクかなんかして防ぐしかないな。最悪の場合、見た奴は殺せば10名の中に入らない。」 「色々話がややこしいけど分かった。一旦その話は飲み込む。」 「だけど、なぜお前は玉で呪いに詳しい?」 「そうだな……全て話そう。」 ゴクリ… 光明がそっと息を呑む。 「俺は………」 1年後。 ザーザーと降る雨に打たれながら歩く。 微かに光明のすすり泣く声が聞こえる。 持ち物は数ヶ月分の食料となけなしのお金が入ったリュックのみだった。 「………もう嫌だ…」 「限界だ…」 彼が向かっている場所は家から遠く離れた小さな公園だった。 「アイツだ……アイツのせいで……!!」 泣き声から徐々に復讐の声に切り替わる。 「俺の立場が消えたんだ…!!」 先程とは裏腹に怒鳴り声が狭い路地裏に響き渡る。 「絶対に許さない……」 すると横から可愛らしい声が耳に届く。 「ニャ〜ン。」 「……猫?」 その猫は黒い毛並みで決して健康には見えなかった。 ボロボロの段ボールに入れられ、それには「拾って下さい。」とだけ書かれてある。 「お前も……俺と一緒か…。」 「一緒に行こうぜ。」 1週間後。 「クロ〜お前はやっぱ可愛いな〜。」 捨て猫を愛でて撫でている。 「じゃあそろそろ準備するか〜…。」 ここで光明の目付きがガラリと変わる。 まるで何者かを殺す目だ。 「絶対に許せないアイツを殺す準備。」 「クロも戦えるように特訓でもするか。」 口調が変わる。 「何が何でも殺してやる。」 雷土千尋____。 そして長年の月日が流れた現在。 「ここがアジトの裏側っぽいね。」 神宮雄二が言った。 「この壁を壊して行くしかないのか?」 九崎隆二が言った。 二人が口を揃えて言う。 「「光明さんどうします??」」 「ハッ……!あ、あぁそうだな……」 「大丈夫ですか…?」 心配そうに神宮が声を掛ける。 「すまん…少しぼーっとしていた。」 「壁を壊すしか道は無さそうだ。」 「分かりました!壁ぶっ壊します!!」 「え、ちょま……。」 そう言った時にはもう遅かった。 バコオォォン……! 躊躇う余裕もなく壁が一瞬にして粉砕された。 「これで行けますね!」 満面の笑みで光明を見つめる。 「馬鹿お前!そんなでけぇ音立てたらバレるだろ!」 「こっち側の目的は漆を連れ出すことだぞ!」 大きな声で神宮に怒鳴る。 「(光明さんも声でかいけどね。)」 一人呟く九崎であった。 「ま、敵は見た感じいなさそうだし進むか。」 「ここからは慎重にな。」 光明の声に重みが感じられた。 カツカツカツ…… 時間を掛けながらゆっくりと歩いて行く三人一同。 すると二つ道が現れた。 「分かれ道か……」 「そういやこの建物入った時から…」 光明が喋っている途中、痺れを切らしたのか、 「じゃあ俺右に行きます!」 神宮が勢いよく右の道へ駆け抜ける。 「え、えぇ!?ちょ待てって神宮!」 九崎の声は無情にも神宮に届かなかった。 「追いかけましょう!光明さん!」 「いや、俺は左の道へ行く。」 「漆を見つけ出す以上固まって行動すると効率が悪い。」 「それにアイツは強いから一人でも大丈夫だ。」 「お前は好きな方に着いてけ。」 「で、でも!」 反論しようとする九崎を置いて光明は左の道へ行った。 九崎は只々棒立ちすることしかできなかった。 「なんで二人とも俺を置いていくんだよ……」 「いや、こんなとこで何してんだよ俺は。」 「進むんだよ俺は…!」 「俺の好きな方……」 その言葉を最後に九崎はそこから姿を消した。 自分の好きな方へ___。 次回第16話「お別れハグ」
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