HS猫改造軍団に初の男の娘 「薫ちゃん、本当におしゃれだよね。そのジャケット、どこのブランド?」「あ、えっと……原宿の古着屋さんで見つけたんだ」19歳の薫は、専門学校の女子グループに囲まれ、引きつりそうな笑顔をなんとか維持していた。高校を卒業し、環境がガラリと変わったのを機に、薫は一つの大きな決断をした。それは、自分が「男」であることを周囲に完全に隠すということ。高校時代、男だと明かすたびに相手が見せた、あの気まずそうな顔、好奇の目、傷つくような言葉。もうあんな思いはしたくない。ただ普通に、大好きな可愛い服を着て、自分を認めてくれる友達と、普通の学生生活を送りたかったのだ。幸い、華奢な体型と手入れされたターコイズブルーの髪、そして少し高めの声のおかげで、学校では完璧に「おしゃれで物静かな女の子」として通っていた。けれど、嘘をつき通す生活は、想像以上に心にすり傷を作る。「今度みんなで温泉旅行行かない? カニ食べ行こうよ!」「あ、私は……その、肌が弱くて、大浴場とか苦手だから、やめとくね」「そっかぁ、残念。じゃあ今度お泊まり女子会ね!」悪気のない誘いを断るたび、胸がキリキリと痛む。「薫ちゃんって彼氏いるの?」「どんなタイプが好きなの?」という恋バナの輪に加わる時も、頭の中で必死に「女の子としての回答」を組み立てなければならない。(みんなを騙しているみたいで、苦しいな……)放課後、一人で駅へと向かう道すがら、薫は通学カバンをぎゅっと抱きしめ、いつものようにうつむいた。自分が自分らしくあるために選んだ嘘なのに、その嘘のせいで、どんどん自分が透明になっていくような気がしていた。ターコイズブルーの髪を夕風に揺らしながら、薫は小さくため息をつく。学校での自分は偽りかもしれないけれど、いつか本当の自分を隠さずに、この大好きな服を着て笑える日が来るのだろうか。19歳の薫の胸には、答えのない不安と寂しさが、静かに募っていくのだった。