小説は下↓ 『色彩の過食症』第二章:ハッピーエンドの裏地 ――どうして僕は、一人でこんなに笑っているんだっけ? その疑問は、カラフルな紙吹雪に埋もれて消えた……はずだった。 けれど、世界の一部(ペンキ)になって溶けたはずの僕の意識は、なぜかまだ消えていなかった。 意識は薄い膜のようになって、このお菓子でできた街の「地面」や「空気」にじっとりと染み込んでいた。「あはは! 今日も最高! 毎日が記念日!」 大通りを、誰かが走っていく。 それは、さっきまで僕だったはずの、新しい「僕」だった。空に昇った色の塊から新しく生まれ直した、記憶を持たない僕の人形。 新しい僕は、キャンディの雨を浴び、巨大なスプーンを振り回して楽しそうに笑っている。 三百年、ずっと繰り返されてきた光景。 でも、地面(世界そのもの)になってしまった今の僕には、さっきまでは見えなかったものが、ぜんぶ見えていた。「おめでとう! 今日は君の、一億回目の『何でもない日』だね!」 街路樹の街灯が、新しい僕に向かってお辞儀をする。 その瞬間、僕は気づいてしまった。 お辞儀をした街灯の根元。きらきら光るラッピングパウダーの隙間から、カラフルな絵の具でギチギチに塗り固められた「本物の人間の白骨」が、何百、何千と突き出ているのを。 地面のクラッカーが弾けるたび、骨の噛み合う「ガチガチ」という乾いた音が響く。 空を焦がす金銀の紙吹雪は、この世界に閉じ込められた人々の、乾いた「悲鳴」の破片だった。 ここは天国なんかじゃない。 ここは、溢れかえる色彩と幸福感で脳を麻痺させ、人間を甘いお菓子に変えて貪り食う、巨大な「胃袋の中」だったんだ。「あはは、おかしい! 楽しすぎるよ!」 何も知らない新しい僕は、自分の指先が絵の具になって溶け出しているのを見て、嬉しそうに飛び跳ねている。(だめだ、逃げて――) 僕は地面から、声にならない叫びをあげた。 その瞬間、街中のすべての街灯がギギギ、と首を回し、地面(僕の意識)をギロリと睨みつけた。「おや、不合格(バグ)だ」「味がついているぞ。まだ『悲しみ』が残っている」「はやく、もっと、お砂糖を注いで塗り潰さなきゃ!」 空の雲が一斉にひび割れ、僕の意識を目掛けて、ドロドロとした原色のシロップが容赦なく注ぎ込まれ始めた。
第二章!祝?