私は小学6年生だ。母と小学2年生の弟と暮らしている。はたから見ればごく普通の幸せな家庭に見える。だけどそれは表面だけで本当は全く幸せなんかじゃなかった。 毎日暴言を吐かれる日々。暴力はうけなかった。あざなんかができたら他の人に怪しまれるから。精神的苦痛に耐える日々だったけど、弟が、弟だけがたった一つの救いだった。私は毎日弟と話したり遊んだりした。おもちゃなんか持ってなかったけど、弟と関わる時間はとても楽しかった。ある日、弟と母が学校に呼び出された。弟は真っ青になって震えていた。生きてる人間の顔色じゃなかった。話を聞くと弟がクラスメイトに暴力を振るったらしい。弟によるとクラスメイトが自分や自分の家庭に関する悪口を言っていて気づいたら暴力を振るっていたらしい。私は一人で留守番をしていた。ただぼーっとしていた。なにも、する気にはなれなかった。 何十分かたった後、弟と母が帰ってきていた。弟は半泣きで母はゾッとするほど真顔だった。母は学校に行くのは嫌だったと思う。なぜなら、学校の先生は子どもを見守る立場だから、私たちの異変に気づかないわけがない。でも、私と弟は先生になにを聞かれても答えなかった。家庭のことを答えたら、母に何をされるかなんて想像もできないから。だから母は先生からの印象もすごく悪い。それでも笑って幸せな家庭を演じている母はかなり怖かった。目は笑ってなかったから。 夜になって、私は宿題をしていた。つい熱中してしまって母と一緒に浴室に入る弟は目に入らなかった。そのとき、 「ドン」 という音で顔をあげる。間違いなく浴室から。 戸惑っていると、もう一回 「ガン」 という音がする。 撲殺 その言葉が何回も頭をよぎる。 いやそんなこと…でも、それしかありえないような気がする。 私は息を潜めた。しばらくしてずりずりと廊下から何かを引きずる音がする。私は怖くなって耳をふさいで目を閉じた。しばらくたって母がリビングに戻る。目に光はなかった。その日はお風呂に入るなと言われた。体がベタベタして少しかゆかったけどそれどころじゃなかった。でも弟のことなんて怖くて聞けなった。 次の日 母は朝からお風呂掃除をしていた。見に行かなかったけどいつもお風呂掃除ようのスプレーでささっと終わらせる母がスポンジかなにかで念入りにこすっているのは分かった。 昼 母は近所の人と立ち話をしていた。弟のことを聞かれると母は今日は風邪だと言っていた。もちろん嘘だ。だって弟は…この世にはいないんだから。 弟を探す気にはなれなかった。食欲もなくなった。母は無理矢理食べさせてきたけど後で吐いた。 毎日毎日私のそばにいて離れなかった弟はもういないのだ。そう考えると分かっていたのに涙がこみ上げる。 ある日の夜 眠れなかった。弟の顔が頭からはなれなかった。 私はおもむろに起き上がりおぼつかない足取りで母が寝る寝室に向かった。だが、その前に物置部屋に行って「あるもの」を手にした─── 寝室のドアをゆっくりとドアを開ける。母はまだ寝ている。私は母に近づいて手にしていた「金属バット」で母をドンと殴った。どこを殴ればいいなんて分からなかった。改めて母を見る。頭から血を流してぐったりしている。 悲しかったけど安堵もあった。 私は金属バットを寝室に投げ捨ててサンダルをはいて家を出た。そのまま誰もいない真夜中の道路を一人で歩き続ける。この先には交番がある。 交番が遠くに見え始めた頃後ろから足跡がすることに気づいて振り向いた。 そこには頭から血を流した母がいた。母の手には部屋に投げ捨てた金属バットがあった。 私は動けなかった。 母はこっちに走ってきて金属バットを振り落とした。 それがその日最後 いや、人生最後の光景だった。
題名は思いつきませんでした☆ 音源 マトリョシカ @sutegobaruto