講義が終わった夕方。 「蓮、帰ろ」 湊がいつものように蓮の袖を引っ張った。 「……待って」 「ん?」 蓮は周囲を見回してから、湊の手を握った。 「ちょ、蓮……!」 「嫌?」 「……嫌じゃないけど」 その瞬間、少し離れたところにいた女子二人が振り返った。 「えっ」 「待って待って、今手つないだ?」 「見た。完全に見た」 二人の声をよそに、蓮は湊を連れて人気のない廊下へ向かった。 「どうしたの?」 「さっき、男と話してただろ」 「友達だけど?」 「分かってる」 蓮は湊を見つめた。 「でも、嫉妬した」 「……蓮が?」 「俺だってする」 湊の顔が一気に赤くなる。 「そんな真っ直ぐ言われたら……困る」 「じゃあ、もう一個言う」 「なに?」 蓮が一歩近づく。 「好き」 「……っ」 湊が目を逸らす。 「俺も……好き」 「こっち見て」 「無理」 「じゃあ俺が見る」 蓮がそっと湊の頬に触れる。 湊が驚いて顔を上げた。 そして―― 触れるだけの、短いキス。 「…………」 二人とも固まった。 「……蓮」 「ん?」 「今の……ずるい」 「嫌だった?」 「……逆」 湊は真っ赤になったまま、蓮の服をぎゅっと掴んだ。 「もう一回……してほしい」 蓮が少し笑う。 「素直じゃん」 「うるさい!」 その頃、廊下の角では。 「…………」 「…………」 「今、見た?」 「見た」 「キスしたよね?」 「した」 「…………今日の講義、来てよかった」 二人の恋を見守る女子たちは、静かに拳を握りしめた。 そして本人たちは、そんなことなど知らずに、照れながら並んで帰っていった。
ゆーのん以外閲覧禁止 「なあユウ! 今日の俺、めっちゃイケてへん?」 「……いつも通りじゃない?」 「そこは『めっちゃカッコいい』って言うとこやろ!」 「なんで?」 「なんでって……!」 アキトが大げさに頭を抱える。 その拍子に、頭のてっぺんにあるアホ毛がぴょこんと揺れた。 ユウはそれをじっと見つめる。 「……アキト」 「ん?」 ユウが手を伸ばした。 そして―― ペショ。 「…………」 押さえつけられたアホ毛が、ぺたんと寝る。 「……」 「……」 数秒後。 ピョコッ。 元通り。 ユウは無言でもう一度押さえる。 ペショ。 そして、 ピョコッ。 「……流石アホ毛」 ユウが少し笑う。 「簡単には収まってくれないな」 「へへ~、すごいやろ……✨✨」 「褒めてない」 「えっ」 アキトがショックを受けた顔をする。 ユウはそんなアキトを見て、思わず吹き出した。 「……ふっ」 「今笑ったやろ!」 「笑ってない」 「いや笑ったって!」 「気のせい」 ユウはそう言いながら、今度はアホ毛を指でつまんだ。 くるくる。 「……何してんねん」 「ちょっと気になった」 くるくる。 「ユウ、気に入ったん?」 「……まあ」 「ほな、好きなだけ触ってええで!」 「なんでお前が許可出してるんだよ」 そう言いながらも、ユウは楽しそうにアホ毛を指でくるくるしている。 アキトも嬉しそうに笑った。 「なんか今日、ユウ機嫌ええな」 「そう?」 「うん。めっちゃ笑ってる」 「……アキトが面白いからじゃない?」 「え、俺おもろい?」 「そこ?」 ユウがまた笑う。 「ふふっ」 「ほら! また笑った!」 「……うるさい」 ユウは笑いながら、アキトのアホ毛をそっと離した。 「帰るぞ」 「おう!」 二人は並んで教室を出る。 「なあユウ」 「何?」 「明日もアホ毛触ってええで」 「……俺が触る側なんだけど」 「ほな明日も触ってな!」 「はいはい」 そう言ったユウの顔には、また小さな笑みが浮かんでいた。