〜拒絶〜 翌朝。 Papyrusは起きなかった。 最初は、ただ眠っているだけだと思った。 「Papyrus。」 返事はない。 「……Papyrus?」 肩を軽く揺らす。 それでも、起きない。 呼吸はしている。 身体も、まだ温かい。 だから。 俺は、それほど心配しなかった。 「……寝坊か。」 Papyrusなら、たまにはある。 そう思った。 毛布をかけ直して、部屋を出る。 その日は、いつも通りに過ごした。 ……いや。 いつも通りにしようとした。 * 夜になっても、Papyrusは起きなかった。 「Papyrus。」 ベッドの横に座る。 「そろそろ起きろよ。」 返事はない。 「……今日はずいぶん寝るな。」 もちろん、返事はない。 俺はしばらく黙っていた。 それから、本を一冊持ってきた。 「……起きたら、続き読もうな。」 ページを開く。 ゆっくりと読み始める。 声に出して読む。 Papyrusは眠ったままだった。 でも。 俺は読み続けた。 * 次の日も。 Papyrusは起きなかった。 その次の日も。 さらに、その次の日も。 それでも、俺は毎日部屋へ行った。 朝になれば様子を見る。 食事を用意する。 身体を整える。 毛布をかけ直す。 そして、本を読む。 昔の話もした。 「覚えてるか?」 返事はない。 「昔、Snowdinで迷子になったことあったよな。」 返事はない。 「お前、あのとき自分が迷子になったって認めなかったっけ。」 返事はない。 俺は少し笑った。 「……まあ、俺も悪かったけど。」 それでも、返事はない。 * 外の世界は、日に日に変わっていった。 寒さは、もう「寒い」という言葉だけでは表せなくなっていた。 雪は深く積もり。 水は凍り。 炎は弱くなった。 町の明かりも、少しずつ減っていった。 店を閉めるモンスターが増えた。 外に出なくなるモンスターも増えた。 誰かがいなくなっても。 それを聞く余裕すらなくなっていた。 みんな、自分が生きることで精一杯だった。 俺はそんな地下を歩いた。 そして、家へ戻る。 Papyrusの部屋へ。 「……ただいま。」 返事はない。 「今日は、もっと寒かったぞ。」 返事はない。 俺は椅子に座る。 そして、本を開く。 * ある日。 町で、小さな玩具を見つけた。 古いものだった。 傷もついていた。 けれど、Papyrusが好きそうなものだった。 俺はそれを買った。 家に帰る。 Papyrusの部屋に入る。 ベッドの隣に置く。 「……新しいの、買ってきた。」 返事はない。 「起きたら使おうな。」 返事はない。 俺はしばらく、その玩具を見つめていた。 それから、椅子に座った。 「……気に入ると思う。」 返事はない。 でも。 俺は待った。 いつか。 Papyrusが目を覚ます日を。 * 何日経ったのか。 もう分からない。 外を見る。 雪が降っている。 窓は凍りついていた。 俺はPapyrusの部屋へ向かう。 今日も、眠っている。 変わらない。 「……おはよう、Papyrus。」 返事はない。 「今日は本、持ってきたぞ。」 返事はない。 「昨日の続き。」 椅子に座る。 本を開く。 読み始める。 途中で、少しだけ声が震えた。 でも、読むのをやめなかった。 Papyrusが起きたとき。 続きを聞けるように。 最後まで読めるように。 だから。 今日も読む。 明日も読む。 その次の明日も。 Papyrusは、いつか起きる。 きっと。 ……そう思っている。 いや。 そう思わなければ。 俺はきっと―― 壊れてしまう。 だから。 俺は今日も、Papyrusの隣にいる。 本を読む。 昔の話をする。 新しい玩具を買ってくる。 そして、眠っている弟に話しかける。 「……おやすみ、Papyrus。」 返事はない。 それでも。 俺は笑った。 「また明日な。」 部屋を出る。 扉を閉める。 外は、相変わらず寒い。 地下には、もうほとんど温もりが残っていない。 それでも。 あの部屋だけは、まだ暖かい気がした。 Papyrusがいるから。 ……いや。 違う。 俺が、そう思いたいだけなのかもしれない。 それでも。 明日も、あの部屋へ行く。 Papyrusが目を覚ます、その日まで。 俺は、待ち続ける。 DTFE chapter 1 残り火の記憶 完 DTFE by Team DTFE undertale by Toby fox 氏 ...疲れた。もうやりたくない... これでsansの心境が伝わればいいんですけど