曖昧な別れ、カウントダウン 〔DAy 0〕「カウントは」 それは、何も変わらない家路だった。 西日に照らされた通学路を歩く。聞き慣れた踏切の音が響く。制服のポケットでスマートフォンが震えたが、友人からの他愛ない連絡だろうと思い、気にも留めなかった。 家に着くと、靴は二足しかなかった。お父さんはまだどこかへ出かけているのだろうか。 空には、わずかに太陽の名残があった。 ポケットからスマートフォンを取り出すと、視界にはまず時刻が入ってくる。 その次に通知が一件。ニュースアプリからだった。 どうせまた、どこかで起きた事件の記事だろう。 そう心の中でつぶやき、通知を消した。 家に荷物を置き、夕飯の支度をするために、近所の閉店間際のスーパーに駆け足で入店する。 いまでは並んでいるのは国産の商品ばかり。 牛肉と玉ねぎだけ買って帰ろうとしたとき、閉店の時間になった。だが、今日はまだ閉店しないようだ。 少し気味が悪いので、駆け足で家に戻った。 家に着くと、珍しくテレビがつけられていた。普段なら節電のため、家に誰かがいても消されているはずなのに。 母は台所に立ったまま手を止め、画面を見つめている。 私も何気なくテレビに目を向け、その内容に息をのんだ。 急いでスマートフォンを取り出し、ニュースアプリを開く。画面には同じ話題が、どのニュースサイトでも一面を埋め尽くしていた。 【二日後に核爆弾が降ってくる】 それは、この世との別れを告げる合図だった。 でも、こんな物騒なものが降ってこなくても、この国がここから立ち直ることは、もうないのだろう。 そう考えると、これも一つの終わり方なのかもしれない。 この町で、泣いている人はいなかった。 〔DAy 1〕「別れを告げて」 朝、ゴミ出しをしてから学校に行くはずが、犬に絡まれて想像以上に遅れてしまった。 犬は、寂しいのだろうか。 学校に着く頃、時計の長針は13分を示していた。 「やべ....」 クラスにつくと、案の定叱られる、と思うと、 「遅刻。」 いつもはうるさい生活委員長が、今日だけはこの一言だけ残して去っていった。 席に着くと、後ろの席から、 「ゆーたん、やっちまったなぁ〜」 と声が飛んできた。 そこにはいつもと変わらない、親友の姿があった。 見る限り、みんないつもと変わり無いようだ。 先生が泣き崩れながら教室に入ってきた。 うわ.... 前の人たちかわいそ。 「じょーだんですよ」 と先生が言い、赤くなった目を擦るといつも通り出席をとり始めた。 明るく振る舞っていた。 よくよく見ると、欠席はいないようだ。普段こない人を含めて。 そんなことを考えているうちに出席が終わった。 呆然としていて返事を忘れた私は、先生にからかわれるように、謝るまで黒板の欠席者欄に名前を残された。 「第三次世界大戦終結から、明日でちょうど4ヶ月ですね。みなさん、変わりなく過ごしていますか?」 いつもなら、私含む大体の人がスマホをいじっている頃だが。全員、話を聞いていた。 変わらないわけ、無い。 昨日、告げられた運命。もう、戻れなくなった。 「だって、明日でみんなとお別れじゃん。」 クラスメイトの一人が、言った。 「............」 しばらく黙り込んでしまった。 「流石にいいすぎじゃ」という言葉が上がってきた頃に、 「それでは、これからさまざまな"人生最後"を経験しましょうね。」 「まずは作文からで〜す」 先生はいつもの笑顔を貼り付けたまま、引きつった声で言った。 質の悪い、新聞紙のような原稿用紙が配られると、 授業ではない授業が始まった。 自由なテーマの作文。いきなりそんなものを突きつけられ、悩んでいた。 「ゆーたん、何書くの?」 助けの船がやってきた.... 「どうしよ。何も決めてない、ていうか書きたくない....」 「作文苦手だもんね〜」 「これもあの"陽キャたち"のせいだ!!!」 「流石にそれは逆恨みなんじゃ....」 "陽キャたち"と言う言葉に反応した数人のクラスメイトに睨まれたため、顔を下に向けた。 「この前もらったチラシにのってたヤングケアラーについて書こっかな..」 結局、その後はずっと空を眺めていたため、全く汚れていない紙を提出した。 ーー放課後ーー 澄み渡った橙色の空には、雲が張り付けられていた。 今日もなりちゃんと別れを告げてちょうど反対方向にある家へと向かった。 今日は金曜日。普通ならスーパーでセールをやっている。でも、今日はやっていない。 私の視界に入っている店は、どこも明日には閉店する。 いつも通り踏切を超えて見慣れた世界に入っていった。 「ただいま」 気温の低い室内に、その言葉は響いた。 一人の時ほどよく音は響くらしい。 「そういや、きょうお母さん遅いんだっけな。」 お母さんが帰ってくるまで、数年前に無くしたビー玉を探していた。 「あった!」 最後の一つを拾い上げると同時に、ガチャンっと扉の開く音がした。 声は届かなかったが、「おかえり」と返した。 大きな段ボール箱を持った、母は帰ってきた。 中にはたくさんの手紙が入っていた。会社でもらったらしい。 夕飯の音がした。物置を掃除していた私は階段を駆け降りた。 今日はすき焼きらしい。 つい最近、日本のすき焼きの始まりを習った覚えがある。 明治時代。国が変わった時代。 これも何かの伏線か、と声も出さずに笑った。 食後の幸福感と香りが漂うリビングとは正反対な、私の乾いた部屋に、今私はいる。 スマホを取り出して電話の着信を待った。 結局、来ないことも知らずに。 〔DAy2〕「曖昧に」 目覚めた時、時計の短針は3を指していた。まだ外は暗い。 起きたってすることがあるわけでもない。 「勉強でもするか。」 気づいたら、窓から差し込む光は赤く染まっていた。 外に出て、陽の光を浴びた。 最後の日なんて、実感はないが。 実際に始まった。 眠くなってきたので、二度寝をすることにした。 目覚ましで、起こされた。止める時、目覚まし時計を壊してしまった。 「もう使わないし」と、流した。 母はもう出かけたようだ。私はネットに入ったバナナを朝食の代わりに食べた。 「苦.....。明日死ぬのかよ....」 そういえば、私が死ぬのは今日だったっけ。 "最後の日"をおとなしく過ごすのは嫌なので出かけることにした。 昨日見つけたビー玉をポケットに入れたままだったので、歩くたびにカチャカチャと音を立てた。 近所にある、照明の無いゲーセンに入った。 人はいなく、機械の自己主張だけがうるさくこだましていた。 クレーンゲームに100円を入れると動いた。当たり前か。 何回か遊んだ後、出て行った。 服屋に入った。いつも通りの、元気のいい挨拶は聞こえなかった。 欲しいものがあったわけでは無いが、とりあえず眺めていた。 そうしているうちに、昼になった。だが、私は気づかないまま街を彷徨いていた。 「ただいま」 「おかえり」 今日、初めての対話だった。お腹が空いたので、パスタを茹でた。 あ、塩入れ忘れた。少し味が足りない気がしたが、美味しかった。 食べ終わると、しばらく家の中で転がっていた。 普段は食後すぐ転がると注意されるが、今日はする人がいなかった。 お父さんの部屋は、今日も静かだった。 そろそろ、時間な気がしたので、お父さんの顔写真を持って、見晴らしのいい丘に出かけた。 日が傾き始めて、風が少し強くなってくる。そんな中、1人で待っていた。 写真に挟まっていた橙色の紙が落ちた時、足音が聞こえた。 「ごめん!昨日電話忘れて寝てた!」 後ろを振り向くと、いつもと変わらないなりちゃんが居た。 「大丈夫だよ。私も寝てたから。」 少し、俯いてため息をついた。 「夕凪、無理してない..?」 「こんな時にする心配事じゃないでしょ」 と、返すと 「確かに」 とか言ってきたので、思わず笑ってしまった。 しばらくの沈黙が続いた。 ちょっと前までは好きだったが、今では沈黙は嫌いになってしまった。 「本当は......もうちょっと生きたかった。」 「受験して、進学したかった。」 「でも...」 思わず、大粒の涙が目から出てきた。堪えられなかった。 私ってこんなに泣くタイプだったんだ、と思った。 死ぬ間際に知ることなんてあったんだ。 なりちゃんも返答が思いつかないのか、俯いていた。 雨が降りそうな湿った空気だったが、空は雲ひとつなく、赤くなっていた。 1秒1秒が延長されているようだったが、時間は進む。機械的に。 ただ、無慈悲に。近づいてくる。 思い出話をした。何回も、同じ話題が出てきた。 全てが出尽くした頃、空は赤紫になっていた。 本物の太陽を感じることは、もう2度とできないだろう。 空が藍色になった時、一際明るいものが見えた。 本当は、嘘だったらよかった。 でも。すぐそこまで迫っていた。 そして、私たちは閃光を見るより前に消滅した。 人間のいなくなった世界に残った音は、公民館から流れる機械音声だけだった。 Fin. ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー メモとクレジット 参考:Google AI様 ChatGPT様 (Open AI様) 構成: シナリオ: 背景: 世界設定: キャラクター設定: