小説「隠された光」 第三話 - 過去の探し物(前編) 第一話 https://scratch.mit.edu/projects/1367012893/ 前回 https://scratch.mit.edu/projects/1367266856 * * * 『あのことは、やっぱり...』 『ずっと隠しておくわけにはいかないと思うの。』 ......あの時隠したもの。 その頃の俺たちにとっては...いや、今の俺たちにとってもそれはあまりにも大きすぎた。世界規模で見れば些細な事かもしれないが、重大なことであるのには間違いない。俺たちはそれを四年前のあの日からずっと隠してきた。 牡丹『神室もそう思って話してくれたんだよね』 『私も、このままじゃだめっておもってたんだ。』 神室『...うん。』 『あれはもう、間近に迫ってきているから。』 『それに、このことを知っているのは...』 『俺たちだけだから。』 少しの間沈黙が続いた。 牡丹『...だよね。』 『やっぱり私達で動かないと...』 神室『でも、全て確定してる訳じゃない。』 『四年前のことだから、記憶も曖昧だし。』 『...だから、一度確かめるだけ。』 牡丹『..そうだよね。』 『まだ明らかなわけじゃないし。』 またしばらく沈黙が続き、その後こういわれた。 牡丹『じゃあ明日。』 『明日また神社まで来れる?』 神室『明日は部活があるけど』 『夕方からなら』 どれだけ重大なことがあっても、日常は普通に続いていく。生活というものはおそらくどんなことがあっても止められないだろう。明日の夕方、再び神社へ行くことになった。なんだか気疲れして、その後はすぐに眠ってしまった...。 次の日。 部活のために気合で朝起きて、やっぱり遅刻しそうなので急いで学校へと向かった。部室へ到着して、ドアを開けた。どうやら遅刻は免れたようだ。 優「あ、西口くん、おはよう。」 神室「おはようございます」 いつも通りの風景だ。俺はさっそく、楽器の準備に取り掛かった。部活では、三、四人のグループに分かれて演奏の活動をしている。 部員A「おはようございまーす」 優「おはよう。これで全員かな?」 部員B「そうですね」 部員A「今日も頑張っていきましょう!」 俺は、いつも一緒に演奏しているメンバーと練習を始めた。少し前から同じ曲の練習をしているので、前よりは少しうまくなってきた気がする。しばらくして、部活内で演奏を発表することになった。 部員A「イカれたメンバーを紹介するぜ!」 神室「ェなんですか急に()」 部員A「ギター!」 「遅刻魔界隈期待の新星!西口神室!」 神室「遅刻魔界隈やめろ」 ...なんか始まった。なんだこれ。 部員A「ベース!」 「校庭のアリを二時間眺めてた!樫本咲良!」 咲良「これ続けるんですか...?」 部員A「ドラム!」 「有線イヤホンを片方なくした!古川龍美!」 龍美「ちょっと待てお前どこでそれを」 部員A「...ッそしてッ!!」 「超天才で超人格者のこの私!!」 「ギター&ボーカル!梶谷真央!!」 龍美「自己紹介がバカっぽいぞ」 神室「人格者なら遅刻魔とか言わないでくださいよ」 咲良「二時間アリ眺る人を眺めるのもどうなの()」 真央「細かいことはいいのだ!」 「行くぞお前ら!!!」 神室「いやちょッ急すぎッ」 突然演奏始めるから、全員慌てて用意を始めた。最初はばらばらだったものの、続けるうちにだんだんと一つの音楽として完成していった。 ...そして、演奏が終わった。 優「おおー...結構いいんじゃない?」 「最初を除けば」 龍美「お前はホントに何やってんだよ」 真央「へへ...ごめんなさぁーい(棒)」 咲良「この人絶対反省してない...」 優「でも、この調子で続ければ」 「お祭りには間に合いそうだね。」 真央「完璧に仕上げて見せますよ!!」 神室「大丈夫なのかな...」 気が付いたら、時計は四時を示していた。 優「今日はこの辺で解散だね。明日もがんばろ!」 部活が終わり、家へと向かった。しかし、今日の俺の足取りは重かった。俺は...俺たちは、これから過去に目をそむけた事実と向き合わなくてはいけない。正直、まだ心の準備ができていない。あの時それを隠したのは......怖かったからだ。嘘だと信じたかった。中学の友達や部活の仲間、誰かと一緒にいるときはそのことを忘れることができた。だけど、ずっと忘れているわけにはいかない。そんな葛藤がずっと心の中で回っていた。 家に着いた。でも、ドアを開けることはなかった。このまま家に入ったら、もう出てこれないかもしれない。なぜかそんな気がしてしまったからだ。スマホを取り出し、メッセージアプリの牡丹のトーク画面を開いた。 ...『部活、終わったよ』 少し手が震えている。すぐに返事が返ってきた。 牡丹『分かった。』 『今から神社に集合ね。』 俺は何度か深呼吸して、神社へと向かった。 俺が神社についたころには、牡丹はすでに神社の石段の前にいた。 牡丹「...昨日ぶり...だね」 神室「...うん」 ............。 神室「...その......」 「ごめん。」 「急にこんなこと言いだして」 昨日からずっと、申し訳ないと思っていた。俺だって本当は思い出したくない。だけど、このまま何もせず、何も変わらなければ、ずっとこれを抱えていくことになる。それだけは嫌だった。 牡丹「...ううん、いいの。」 「私もいつかはなんとかしなきゃって思ってた」 「それに、ずっとこのままってのも」 「よくないし、嫌だって思ってたから。」 神室「...」 牡丹「こんなこと、早く終わらせよ?」 「今日は、確認するだけだしね」 神室「...うん。」 神社の階段を上り始めた。その間、いろいろなことを考えた。これから明らかになるもの。それが、想像しているよりも悪いものだったらどうしよう。そんなことは考えたくないが、どうしても悪い考えが頭の中によぎってしまう。......足が震える。階段を踏み外しそうになった。なんとか転ばずにバランスをとる。 牡丹「...どうしたの?」 神室「いや......なんでもない。」 牡丹「......。」 「大丈夫だよ!」 「そんなに大事にはならないでしょ!」 「何かあっても、なんとかすればいいでしょ?」 それがどれだけ難しいか...と思ったが、それ以上考えるのはやめた。確かに、なんとかなると思ってしまえば、少し怖くなく感じるかもしれない。我ながら情けないが、元気づけられ、階段をのぼり、神社の前まで来た。 最初にお参りをしたあと、神社の横へ回った。そこには、文字が彫られた石碑がある。彫られているのは、この町が栄え始めたころから伝わる言い伝えだ。この言い伝えの内容は、 "この神社に祀られる神様と、代々続く予言者によって、町が栄え、平和が続いていく" といったようなものだ。 予言者というのは、この石碑の内容が伝えられるようになった頃の神主の兄弟、つまり牡丹の遠い親戚ということになる。あまり詳しいことはわからないが、その一族は今でも予言者として神社にかかわっているそうだ。昔は「今年は豊作だ」だとか、「疫病が流行する」だとかそんなようなことを予言し、的中させていたらしいが、今はどんなことをしているのだろうか。 ...そして、俺たちが隠したもの。 それもその予言者による一つの予言だ。 その予言の内容を明確に思い出すことはできない。 けれど、その頃の俺たちにとっては... きっと恐ろしいものだったのだろう。 * * * そろそろ続き思いつかなくなりそうな第三話。 ちょっと長くなりそうなので前編後編と分けてみました。(本音:タイトルが思いつかん()) 画面クリックで新キャラの情報 ♥★3つで次に進みます。