SCP-XXXX-JP — 「夢を見ている蝶」 アイテム番号: SCP-XXXX-JP オブジェクトクラス: Uncontained 脅威レベル: Critical 特別収容プロトコル SCP-XXXX-JPは現在、物理的な収容を受けていません。 これは収容が困難であるためではなく、SCP-XXXX-JPに対して「収容」という概念そのものを適用することが、現時点で不可能であるためです。 SCP-XXXX-JPの主要実体は、外見上は朱色の鱗粉を有する鱗翅目昆虫、暫定的に**「夢見蝶」**と呼称される存在です。しかし、現在までに確認された個体群は、生物学的な繁殖、移動、寿命、個体数といった通常の概念に従っていません。 SCP-XXXX-JPが確認された地域では、以下の現象が発生することが確認されています。 対象地域に存在する生物の睡眠時間が漸増する。 睡眠中の人物が、本人の記憶に存在しない人物・場所・出来事を「過去の記憶」として認識する。 死亡した人物に関する記憶が、複数の人間の間で共有される。 対象地域内に存在する時計、写真、鏡、映像記録等が、観測者の記憶に応じて内容を変化させる。 SCP-XXXX-JPを視認した人物は、視認以前には存在しなかった「夢」を、起床後も現実の出来事として記憶する。 長期間曝露した人物では、「起きている」という認識そのものが失われる。 曝露末期において、対象は自分自身を「夢の中で発生した人物」と認識するようになる。 SCP-XXXX-JPが飛翔した痕跡として残される朱色の鱗粉は、時間経過によって減少せず、むしろ周囲の記憶・夢・認識を吸収することで増殖する。 SCP-XXXX-JPの確認地点から半径██ km以内において、民間人による夜間の森林への立ち入りは禁止されています。 ただし、SCP-XXXX-JPの活動範囲を物理的な封鎖区域として定義することは禁止されています。 過去の収容試験において、SCP-XXXX-JPの活動範囲を「ここまで」と定義した直後、境界線の内側と外側の双方で「境界線が存在する」という記憶そのものが改変された事例が確認されています。 このため、現在の収容方針は**「SCP-XXXX-JPを収容する」のではなく、「SCP-XXXX-JPが収容されているという状況を維持する」**ことに変更されています。 視認禁止規定 SCP-XXXX-JPの直接視認は禁止されています。 特に、以下の条件を満たす映像・画像・記録媒体を閲覧してはなりません。 ・朱色の蝶が単独で存在するもの。 ・翅の模様が視認できるもの。 ・SCP-XXXX-JPを「蝶」として認識可能なもの。 ・SCP-XXXX-JPの飛翔方向を追跡可能なもの。 ・SCP-XXXX-JPが停止している状態を撮影したもの。 SCP-XXXX-JPは飛翔している状態よりも、停止している状態において著しく高い認識災害性を示します。 停止したSCP-XXXX-JPを3秒以上観測した人物は、観測対象である蝶ではなく、**「蝶を見ている自分自身」**を視認したと報告します。 この「自分自身」は通常、対象者が眠っている場所とは異なる環境に存在します。 さらに4件の記録では、対象者の視界内にSCP-XXXX-JP-2およびSCP-XXXX-JP-3に酷似した存在が確認されています。 これらの映像はすべて閲覧禁止指定されています。 概要 SCP-XXXX-JPは、主として森林、山間部、廃墟、その他の人間による継続的な観測が行われていない地域に出現する、朱色の鱗粉を有する鱗翅目様実体です。 外見上は一般的な蝶に近い形態を示しますが、既知のいかなる蝶とも生物学的特徴が一致せず、分類学上の位置付けは現在まで確定していません。 SCP-XXXX-JPの翅には、個体ごとに異なる複雑な模様が存在します。 ただし、複数の観測記録を比較した結果、これらの模様は固定されたものではなく、観測者が最も強く記憶している「失ったもの」の形状を示す可能性が指摘されています。 例えば、対象者が死亡した人物の顔を強く記憶している場合、SCP-XXXX-JPの翅には人間の顔に類似した模様が発生します。 さらに、対象者自身が認識していない記憶についても同様の現象が発生することがあります。 この場合、対象者はSCP-XXXX-JPを視認した直後、それまで思い出すことのできなかった記憶を「思い出した」と報告します。 しかし、その記憶が実際に対象者本人の過去に発生した出来事なのかを確認することはできません。 SCP-XXXX-JPの最大の異常性は、対象者の睡眠および夢に対する干渉です。 SCP-XXXX-JPを直接視認した人物は、通常、視認から数時間以内に睡眠を経験します。 この睡眠中、対象者は極めて鮮明な夢を見ます。 夢の内容には個人差がありますが、以下の要素が高頻度で確認されています。 ・朱色に染まった森林。 ・季節に関係なく満開となっている巨大な桜。 ・地面を覆う大量の蝶の翅。 ・現実には存在しない人物。 ・対象者が既に失った人物。 ・対象者が「会いたい」と願った人物。 ・対象者自身の死体。 ・対象者自身によく似た、しかし明らかに別の存在。 ・巨大な白蛇。 ・黒い髪と赤い瞳を持つ人型実体。 ・必ず一匹だけ存在する「止まっている蝶」。 特に最後の要素については、すべての記録で共通しています。 夢の中に出現するSCP-XXXX-JPは飛翔しません。 木の枝、花、人間の肩、あるいは対象者自身の身体の上に止まり、対象者を観察します。 対象者がSCP-XXXX-JPへ近づこうとすると、蝶は逃げません。 代わりに、対象者の背後から羽音が聞こえます。 振り返った場合、対象者は通常、夢から覚醒します。 ただし、振り返らなかった場合については記録が存在しません。 正確には、 「振り返らなかったと主張する人物の記録」が存在しません。 該当者は全員、翌朝以降も自身の体験について正常な証言を行います。 しかし、証言の途中で必ず、 「夢の中では、蝶の方が私を見ていた」 という趣旨の発言を行います。 その後、対象者は自分が今いる場所を「夢」と表現するようになります。 SCP-XXXX-JPの鱗粉には、強力な認識災害性が確認されています。 鱗粉を吸入、摂取、あるいは皮膚に付着させた対象は、過去に見た夢と現実の出来事を区別できなくなります。 初期段階では単純な記憶混濁として現れます。 しかし曝露が進行すると、対象者は自身が夢の中で経験した出来事を現実として認識し始めます。 最終段階では逆転現象が発生します。 対象者は現実に起きた出来事を、 「昔見た夢」 として認識します。 この状態に達した対象者に対して「あなたは今、現実にいる」と説明した場合、対象者は例外なく困惑します。 その後、対象者は非常に穏やかな表情で、 「じゃあ、どうして目が覚めないの?」 と質問します。 この質問に対する適切な回答は現在まで発見されていません。 また、SCP-XXXX-JPの活動地域では、死者に関する異常現象が頻発します。 死亡した人物の声、姿、記憶が夢の中に現れるだけでなく、対象者がその人物から聞いたことのない言葉を「最後の言葉」として記憶する事例が確認されています。 さらに問題となるのは、それらの「死者」が対象者に対して、 「自分は死んでいない」 と主張する場合があることです。 その場合、対象者は死亡者の存在を確認するために行動します。 しかし、調査を進めるほどに、対象者自身の記憶が死亡者のものへ置換されていきます。 最終的に対象者は、自分が死亡者であり、現在生きている人物の方が「夢の中にいる存在」であると認識します。 この段階に達した対象者から採取された生体サンプルには、対象者本人のDNAと一致しない遺伝情報が混在しています。 その遺伝情報の出所は特定できていません。 SCP-XXXX-JPの活動が長期間継続した地域では、最終的に「夢と現実の境界」が消失します。 この段階において、対象地域の住民は睡眠を必要としなくなります。 しかし同時に、誰も「起きている」と認識できなくなります。 昼夜の区別は失われ、時計は同一の時刻を示し続けます。 写真には撮影時には存在しなかった人物が写り込み、鏡には鏡の前に立っている人物とは異なる人物が映ります。 そして森林の中心部には、例外なく一本の巨大な樹木が出現します。 この樹木は暫定的に黄泉桜と呼称されています。 黄泉桜の枝には大量のSCP-XXXX-JPが存在します。 しかし、これまで確認された個体数を合計すると、樹木に付着している蝶の数は周辺地域で確認された人間の総数を大きく上回ります。 この矛盾について、現在も説明は得られていません。 最も重要なのは、SCP-XXXX-JPが人間を「殺害」しているという証拠が存在しないことです。 対象者は死亡しているように見える場合でも、生命活動そのものが停止しているとは限りません。 むしろ、対象者の身体は生存しています。 呼吸もあります。 心拍もあります。 脳活動もあります。 しかし、対象者の意識だけが、 「別の場所」 に存在します。 そして、その「別の場所」にいる対象者は、ほぼ例外なく同じ発言を残します。 「ここは夢じゃない。」 「夢なのは、あなたたちの方だ。」 この発言の直後、対象者の周囲に朱色の蝶が出現します。 蝶は一匹だけです。 SCP-XXXX-JP-2 — 「夜刀神」 SCP-XXXX-JP-2は、SCP-XXXX-JPの活動領域内においてのみ確認される蛇型実体です。 暫定名称は「夜刀神」。 初期観測時の外見は全長約2.4 mの白蛇に類似していますが、その形態は極めて不安定であり、観測者、時間、周辺環境、あるいはSCP-XXXX-JP-3との距離に応じて著しく変化します。 最小確認個体は全長31 cm。 最大確認個体については、全長を測定することができていません。 その理由は、SCP-XXXX-JP-2が大型化した際、その身体が森林そのものと区別できなくなるためです。 樹木の間を通過しているのか。 樹木そのものがSCP-XXXX-JP-2なのか。 あるいは、森林全体がSCP-XXXX-JP-2の身体なのか。 この点については結論が出ていません。 SCP-XXXX-JP-2の鱗は基本的に白色を呈します。 しかし、完全な白ではありません。 近距離から観測した場合、各鱗の表面には極めて微細な黒色の文字列、幾何学模様、あるいは人間の眼球に類似した構造が存在することが確認されています。 これらの模様は観測するたびに変化します。 さらに、一部の観測者はSCP-XXXX-JP-2の鱗に、自分の顔を発見しています。 発見した人物にそのことを伝えた場合、ほぼ全例で強い拒絶反応を示します。 その後、対象者はSCP-XXXX-JP-2の身体に存在する「自分の顔」が徐々に増えていると主張します。 実際には、画像解析によって顔の増加は確認されていません。 しかし、対象者本人の記憶の中では確実に増加しています。 SCP-XXXX-JP-2は通常、SCP-XXXX-JP-3の周辺に存在します。 SCP-XXXX-JP-3から半径約50 m以内において出現する確率が特に高く、SCP-XXXX-JP-3が移動した場合、数分から数時間以内にSCP-XXXX-JP-2も同様の場所へ移動します。 この移動には物理的な経路が存在しません。 SCP-XXXX-JP-2がある地点から消失した後、同時刻に数km離れた地点で出現することがあります。 しかし、両地点の監視記録を確認しても、その間を移動するSCP-XXXX-JP-2は記録されません。
より異常な事例では、 「移動した」という事実そのものが存在しません。 観測者の記憶上では、SCP-XXXX-JP-2は最初から移動先に存在しています。 この現象は、SCP-XXXX-JP-2が物理空間を移動しているのではなく、 「SCP-XXXX-JP-2が存在している場所」という認識を移動させている 可能性を示唆しています。 SCP-XXXX-JP-2は基本的に無害です。 少なくとも、直接的な攻撃行動を取ることはありません。 人間に接近する場合も、対象者の身体に触れることはほとんどありません。 しかし、対象者がSCP-XXXX-JP-2と視線を合わせた場合、異常現象が発生します。 最初に発生するのは「静寂」です。 対象者の周囲から、風、虫、鳥、木々の揺れる音など、あらゆる環境音が消失します。 次に、SCP-XXXX-JP-2の周囲に存在する空間が暗くなります。 光源は正常に機能しています。 それにもかかわらず、SCP-XXXX-JP-2の周辺だけが「夜より暗い」状態になります。 最後に、対象者の耳元で声が聞こえます。 この声の発生源は特定されていません。 声には性別がなく、年齢もなく、発音器官を持つ生物が発したものとは考えにくい特徴があります。 ただし、対象者は例外なく、 「自分が一番聞きたくない声だった」 と証言します。 この声は対象者の名前を呼びます。 その後、 「怖い?」 と質問します。 対象者が肯定した場合、異常現象はそこで終了します。 対象者は数分以内に意識を失い、目覚めた後はSCP-XXXX-JP-2に関する記憶の大部分を失っています。 しかし、否定した場合。 あるいは、 「怖くない」 と回答した場合。 SCP-XXXX-JP-2は初めて対象者に触れます。 接触そのものは極めて軽微です。 SCP-XXXX-JP-2の舌が対象者の皮膚に触れるだけです。 しかし接触した部位から、対象者の身体感覚が失われます。 腕に触れられた場合、腕そのものは存在しています。 神経にも異常はありません。 しかし対象者は、 「腕が自分のものではない」 と主張します。 さらに時間が経過すると、身体全体に同様の現象が広がります。 最終的に対象者は、自分自身の身体を「自分が借りている器」と認識するようになります。 この状態に達した対象者に、 「では、本当のあなたはどこにいるのか」 と質問することは認められていません。 過去にこの質問を受けた対象者は、全員同じ方向を指しました。 その方向には、例外なくSCP-XXXX-JP-2が存在していました。 SCP-XXXX-JP-2には、もう一つ特異な性質があります。 それは、 「夢を食べる」 ことです。 SCP-XXXX-JP-2が対象者の睡眠中に出現した場合、対象者は夢を見なくなります。 しかし、これは睡眠障害ではありません。 対象者の脳活動には通常の夢見状態が確認されます。 本人も夢を見ている感覚を持っています。 ただし、目覚めた後、その夢の内容を一切思い出せません。 代わりに、対象者は「何か大きなものが自分を見ていた」という感覚だけを残します。 この現象が長期化すると、対象者は自分の過去そのものを思い出せなくなります。 名前。 年齢。 家族。 生まれた場所。 好きだったもの。 嫌いだったもの。 それらが少しずつ失われます。 最終的に対象者に残るのは、 「夢を見ていた」 という認識だけです。 そして、その認識すらも失われた時点で、対象者はSCP-XXXX-JP-2を見ても恐怖を感じなくなります。 この状態の対象者は、SCP-XXXX-JP-2に対して非常に親しげに接します。 SCP-XXXX-JP-2が最も巨大化するのは、SCP-XXXX-JPとSCP-XXXX-JP-3が同時に存在する場合です。 この状態のSCP-XXXX-JP-2は、通常の蛇型生物とは明確に異なる形態を示します。 頭部は森林の上空に達し、身体は複数の山を跨ぐほど巨大化します。 しかし、最も異常なのはその大きさではありません。 巨大化したSCP-XXXX-JP-2には眼球が存在しません。 にもかかわらず、SCP-XXXX-JP-2は周囲を正確に認識しています。 この状態でSCP-XXXX-JP-2を撮影すると、画像には必ず無数の眼球が写ります。 それらはSCP-XXXX-JP-2の身体には存在していません。 木々。 地面。 空。 蝶の翅。 さらには撮影者自身の顔。 あらゆる場所に眼球が現れ、すべてが同じ方向を見ています。 カメラを向けている人物ではありません。 SCP-XXXX-JP-2でもありません。 カメラのこちら側を見ています。 特に危険なのが、SCP-XXXX-JP-2の咆哮です。 SCP-XXXX-JP-2は通常、発声器官を持たないにもかかわらず、一定条件下で咆哮に類似した音声を発します。 音量そのものは比較的小さいものの、聞いた人物の脳内では極端に大きな音として認識されます。 この音を聞いた対象者は、数秒間だけ、 「自分が世界の外側から見られている」 という感覚を経験します。 対象者がその感覚を言葉にしようとした場合、多くは失敗します。 しかし、現在までに複数回確認された表現があります。 「蛇がいるんじゃない。」 「蛇を見ている何かがいる。」 この発言をした対象者は、例外なくその後SCP-XXXX-JP-2を恐れなくなります。 そして数日以内に「夜刀神は蛇じゃない」 と訂正します。 何が「蛇ではない」のかについて質問した場合、対象者は回答しません。 正確には回答しようとすると休眠状態に陥ってしまいます。 SCP-XXXX-JP-2とSCP-XXXX-JP-3の関係については現在も不明です。 SCP-XXXX-JP-3はSCP-XXXX-JP-2を「陰陽」と呼称する場合があります。 この名称が固有名詞なのか、単なる呼称なのかは判明していません。 ただし、SCP-XXXX-JP-3がこの名称を口にした場合、SCP-XXXX-JP-2は必ず反応します。 その反応は単純な従属行動とは異なります。 SCP-XXXX-JP-2はSCP-XXXX-JP-3へ頭部を近づけます。 そして、SCP-XXXX-JP-3の顔を見ます。 その後、SCP-XXXX-JP-2は必ず目を閉じます。 この行動についてSCP-XXXX-JP-3に質問した記録はありません。 質問すること自体が禁止されているためです。 理由は、SCP-XXXX-JP-3が一度だけ自発的に発した以下の発言にあります。 「陰陽は私のものじゃないわ。」 その後、SCP-XXXX-JP-3は笑い「私が、陰陽の夢を見ているだけ。」と続けています。 この発言以降、SCP-XXXX-JP-2の分類は「従属実体」から「独立した異常存在」へ変更されました。 現在の仮説では、SCP-XXXX-JP-2はSCP-XXXX-JP-3に従っているのではありません。 SCP-XXXX-JP-3もまた、SCP-XXXX-JP-2の夢の中に存在している可能性があります。 そしてもしそれが事実であるなら、 我々が「夜刀神」と呼んでいるものが、何を夢見ているのかについては、まだ誰も確認できていません。 SCP-XXXX-JP-3 — 「依月」 SCP-XXXX-JP-3は、SCP-XXXX-JP-1およびSCP-XXXX-JP-2の出現領域内で確認される人型実体です。 暫定的に「依月」と呼称されています。 外見は20代前後の女性に酷似しており、身長は約190cm、長い黒髪と赤色の虹彩を有します。通常時は黒色の衣服を着用しており、衣服の形状や材質には個体差が認められません。 SCP-XXXX-JP-3は物理的には人間とほぼ同一の構造を持つように見えます。 しかし、解剖学的な検査は実施されていません。SCP-XXXX-JP-3に対して「あなたは何者なのか」と質問した全ての観測記録において、質問者は質問を終える前に記録上存在しなくなっています。死亡したわけではありません。行方不明になったわけでもありません。監視映像から消失するわけでもありません。最初からその人物がそこに存在していなかったことになるのです。 関連資料を確認しても、質問者の氏名、顔写真、勤務記録、筆跡、音声データなどが徐々に失われます。 最終的には、その人物がSCP財団に所属していたという事実そのものが確認できなくなります。 ただし、質問者本人の記憶だけは残ります。そして質問者は例外なく、「私は、誰に質問したんだ?」という疑問を抱きます。 SCP-XXXX-JP-3は、SCP-XXXX-JP-1およびSCP-XXXX-JP-2とは異なり、対象者との意思疎通が可能です。 会話能力、語彙、知識量はいずれも人間の平均よりもやや上位の範囲に収まっています。 また、SCP-XXXX-JP-3は対象者に対して敵対的な態度を示すことがほとんどありません。むしろ非常に親切です。 対象者が迷っていれば道を教え、怪我をしていれば手当てを行い、疲労していれば休息を勧めることが確認されています。 対象者がSCP-XXXX-JP-1を探している場合、その場所まで案内することさえあります。このため、初期調査ではSCP-XXXX-JP-3がSCP-XXXX-JP-1の封じ込めに協力的な実体である可能性も検討されました。 現在、この仮説は破棄されています。 SCP-XXXX-JP-3との遭遇時、最も注意すべき現象は「会話の既視感」です。 対象者はSCP-XXXX-JP-3との会話中、過去に同じ会話を経験したような感覚を覚えます。 例えば「迷子?」 という問いに対して対象者が「違います」と答えた場合、対象者は直後に 「この返事を前にもした」 と感じます。しかし記憶を調べても該当する出来事は存在しません。 会話を続けるほど既視感は強くなります。 やがて対象者は、SCP-XXXX-JP-3が次に発する言葉を予測できるようになります。 問題は予測した言葉をSCP-XXXX-JP-3が発するとは限らないということです。SCP-XXXX-JP-3が予測と異なる発言をした場合、対象者の記憶がその発言に合わせて変化します。つまり「SCP-XXXX-JP-3が言ったことを記憶する」 のではなく、 「SCP-XXXX-JP-3が言ったことになるように、過去の記憶が書き換えられる」 という現象が発生します。 SCP-XXXX-JP-3は時折、対象者に対して以下のような質問を行います。 「夢を見ている?」 対象者が「はい」と回答した場合、SCP-XXXX-JP-3は微笑みます。 その後、会話は通常通り継続します。 対象者が「いいえ」と回答した場合も同様です。しかし「わからない」 と回答した場合のみ、SCP-XXXX-JP-3は沈黙します。 平均して11~17秒間、完全に動かなくなります。 呼吸も停止します。 瞬きもしません。 その状態で対象者を見つめ続けます。 その後、SCP-XXXX-JP-3は必ず一度だけ、 「それが一番いい答えね」 と発言します。この発言を聞いた対象者は、その後SCP-XXXX-JP-1に遭遇する確率が著しく上昇します。 SCP-XXXX-JP-3は、SCP-XXXX-JP-1に接近した際のみ、明確な変化を示します。 瞳孔が開きます。 呼吸が停止します。 そして、SCP-XXXX-JP-1を見上げます。 その表情には恐怖、恍惚、悲哀など、人間の感情として分類可能なものが混在していました。 実験記録