「失礼します。」 と、私は王の間へと入る。眼の前の玉座には、私たちがよく知る者。 「よく来たな。今日は何のようで来たんだい?」 「………。」 そう、傍から見れば只のいつもの王様。慈悲深くて、温かい王様。だけれど、今日は少し違って見えた。いや、正確に言えば1ヶ月ほど前からだ。 「黙りこくってどうした?何か言いたいことがあるなら、ゆっくりでいいから言いなさい。」 「……申し上げさせていただきます。 あなた、誰ですか?」 「………?それは一体……。」 「違和感を感じたのは先月頃。王が、王ではなくなったような気がした。私は、色々な手を使って、貴方の異変の正体を探ってきた。そこで、耳寄りな情報を手にしたんです。今日の午後、王との面会の時間がある、と。それで今日、私の疑念は確信へと変わりました。貴方は、王ではない。もっと、別のなにか。」 「………そんなことを言われても、証拠をくれないと……」 「私の目が証拠です。」 静寂。 「………ほぉ。魔眼か。随分と良いものを持ってるではないか……いや、もう隠す必要もないか。」 すると、王だったものは、王の姿ではなくなった。 「上手く化けれたと思ったのだが。まさかこの時代にも魔眼を持つものがいたとはな。驚いた。」 「……あなたは何が目的なんですか?王は…本物の王はどこへ…」 「あ〜あいつ?殺したが?」 「………え?」 「そんな驚くことも無いだろう?私がこうやって成り代わっているのだから、それくらい察しがつくだろ。」 「それは…そうですが……」 「それよりも、お前のその身体からして、降霊術に失敗したといったところか?」 「……ッ……。」 「図星か。まあそうだろうな、お前のような日和っこにできるようなことではない。意識が保てているだけでも褒めて遣わそう。そうだな、この後は何もなかっただろうし、どうだ、部屋で一杯飲まないか?」 「嫌ですよ。未成年ですし。」 「おや、そうか。残念だな。私の素顔を知るものとして、祝のワインでも飲もうと思ったのだが。まあ良いか。ならば、」 そう言って彼は手からマッチほどの火を出し、 「ここで燃やしてしまおうか?」 「…………。」 「……なんだ。反応してくれてもいいのに。つまらん。が、その精神に免じて、ここは見逃してやろう。」 「…悪人にも、情があるんですね。」 「そこらの塵共と一緒にしてもらっては困るな。 一つ助言しておこう。この国は、明日の夜、業火に包まれる。」 「………………?」 「もちろん、私によって、ひとり残らず、だ。だがお前は、この情報を知った。だから、お前には逃げる権利がある。」 「……そうですか。」 「逃げないのか?」 「………ええ。」 「人とは、生に飢える者ばかりなのにか?」 「………ええ。」 「………そうか。面白い奴だ。では明日、望み通り燃やしてやろう。」 「燃やせるものなら、燃やしてみてくださいよ。」 「……相当な自信があるようだな。良いことだ。だが慢心は、身を滅ぼすことになる。」 彼は何処からか取り出したワインを飲み、 「また明日、会おう。小娘よ。その時を、私は楽しみに待っている。」 そう言って、私の面会は終わった。 ************************* 13XX年 某日 一人の家臣の告発により、当時の国王が残虐的な行為をする、という内容の言葉を聞いたことが発覚。それを知った国民たちは、怒り、王宮へと向かった。 翌日、最も栄えていると言われていた国が一つ、消えた。王宮の周辺には骨すら残らない人の死骸の山があり、下街には一人、外傷の目立たない少女が見つかった。 彼女への尋問により、事件の主犯格は1ヶ月前に行方不明とされていた、ファイン・オブリージュであることが発覚した。
ファイン・オブリージュ 過去に、魔女狩りで愛した女を焼かれており、その恨みとして王を暗殺、自らが王に成り代わり、1ヶ月ほどで1つの国を崩壊させた。現在の消息は不明。証言者によれば「私の呪いがきいているのであれば、生きている」とのこと。 ■■■■■■■■ 自らの名前を代償として、降霊術を行って死者を蘇生することを目的としていたが、術は失敗し、彼女は悪魔によって全てを見通す魔眼と不死の呪いを手に入れた。その呪いによって、彼女も今もなお生きている状態であるが、基本的に無気力である。 ************************* 不死というのは、時間が無限にあるということ。それ故、つまらないということ。いくら極めても、極めてしまったらその先はない。本当に、つまらないものをかけられた。