「おはようお父さん、お母さんも」 朝、部屋から降りてきた私は食卓で新聞を読む父とキッチンで朝食を作る母に挨拶をする。 おはようアリス、そう返ってくるとやはり違和感を感じてしまう。 数年前、私はこの人達に拾われた。 話によると、雨の中毛布にくるまれたまま路地裏の地べたに捨て置かれていたらしい。 だから私はこの家での何気ない動作に違和感を感じる。 さっきの動作も、自分の名前が呼ばれるのも、今から食卓の椅子を引く動作も_ ーー芦原アリスーー 先程呼ばれたこの名前もこの人達の子供…つまり私の兄が考えてつけた名前だ。 何故両親や自分の苗字と違うものにしたかはわからない。が、折角考えてくれた名前だ。だから大切にしている。 そういえば、と目の前に座る父が声を出した。 どうしたのか?と母が聞くとこう帰ってきた。 「久しぶりに霖が帰ってくるらしい」 霖…本名、我妻霖之助。職業マジシャン。私を溺愛してやまない兄。私の周りで唯一色付いて見える人。今はマジックの技術が極限まで発達して国内外問わずテレビ番組やイベントに引っ張りだこらしい。 そんな兄が今日帰ってくる。 特に驚きはしなかったが嬉しいと感じた。何故…?まあいいか。 「教えてくれてありがとう、お父さん」 兄さんが帰ってきたら何をしようか?考えて置かなければ! 考えていると頬が緩んだ。
暇だった