前章↓ https://scratch.mit.edu/studios/29586791/ 「えっ!あなた・・・名前ないの?」 「そっか・・・じゃあ、ヒーローだから......ヒロ!どう?」 「えっ...安直すぎる?〜〜〜っ、いいじゃん!もう〜」 温かな日。 温かな笑い。 どこか寂しそうなあなたが、少し...楽しそうに見えた。 「センパイ!!」 「っ!!」 ドオン、ドオン、ドオン...度重なる攻撃が、ミントとカサネの体力を削っていく。 「避けるので精一杯だ...インクの攻撃も...果たして効いているのか...」 「センパイ!とにかく今は時間を稼がないと...ハチ達が逃げ切れるように!」 7Kは絶えず攻撃をしてくる。...逃げる場所をなくすように。 「チッ...逃げ場がなくなってきた...アイツ...わざと致命傷になるような攻撃を出さずに...逃げ場を...」 「うぁっ!」 カサネの頬を、矢が掠る。続けて、剣や銃弾...攻撃の速度が上がっていく。 「カサネ!」 「大丈夫ですセンパイ!とにかく早くどうにかしないと..."無関係"の人は消さないとか言ってましたけどアイツ...記憶をいじるだとか...! それにロットさんも助けないと...!」 「ああ...」 ミントは攻撃を避けながら、ロットが倒れている場所へ視線を向ける。 そして、頭の中を駆け巡っていく...ある日の記憶。 「やあヒロ!今日もパトロール?あたしも連れてってよ!」 「ダメだ...じいさんに怒られる、部外者は参加禁止」 「うっ...そうだよねえ...。はあ、どうしたものか...」 「街に戻ってバトルでもしてくればいいじゃないか、それならお金だって貯まるし...身の危険もない」 「いや〜、それが...バトルもいいんだけどさ...一緒に参加してくれるような友達が...いないというか...」 「.........」 「いやっ!決して!ぼっちという訳じゃあないんだよ!ただ街に出てきたばかりで...知り合いがそもそもいなくて...」 「それをぼっちと言うのでは?」 「うっ...」 ヒロは武器の手入れをしながら、私の話を聞いていた。 悪い敵をやっつけるヒーロー。そんな仕事をする彼のことを...なぜだか私は、誇りに思っていた。 「そういうヒロはどうなの?バトル、参加しなくていいの?いつもパトロールで...気分転換にさ、どう!?」 「いや、俺にはパトロールがあるから、無理だ」 「パトロールの気分転換にって誘ったのに...パトロールを理由に断られたんだけど...」 はははとヒロが笑った。 この頃のヒロは...なんだか、楽しそうだった。 「分かった!あたしが"部外者"じゃなくなればいいんだ!」 「...は?」 「だ・か・ら!あたしがヒーローになれば!ヒロの仕事も手伝えるし...?バトルの練習にもなるし...?一石二鳥!」 「今日のバトルでも友達ができなかったのか?」 「えええええっと...断じてそんなことは...」 「ふーん...?」 「でもさ!いい案だと!思わない!?どうですかヒロさん!あたしをチームに入れる気はありませんか〜??」 私がそう詰め寄ると、ヒロは一瞬笑った後...心配した顔になって、呟いた。 「...こんな危険な仕事、任せられないよ」 「えっ?今なんて...」 「それに、俺独断じゃ決められない。じいさんーーー司令の許可がないとだな...」 「それならいいゾイ!」 「えっ...」 どこからともなく司令が現れて、OKサインを出す。 「で、でもじいさん...」 「わかっとる。オヌシ...心配しておるのじゃろう?」 「っ...」 「大丈夫じゃ。オヌシがついておるじゃろう」 「しかし...」 「じゃあ決まりだね!あたし、今日からヒロの手伝いをする!大丈夫!あたし、これでもバトル、ランク上位なんだから!ヒロに心配かけないように、頑張ってきたの!」 私はヒロの手を取って、話続ける。 「...もし危険だと思ったら、すぐにあたしをメンバーから外してくれていい。だから...お願い。ヒロの力になりたいんだ!」 「俺の...力?」 「そう!街を守るヒーロー!その力になりたい!」 そう言うと、ヒロは笑ってくれた。 その時の笑顔は...それまでで一番、晴れやかな笑顔だった。 「っ...こんな時に...恥ずかしい記憶を思い出してしまった...」 攻撃を避けながら、ミントはその記憶を思い返していた。 ヒーローという仕事に、誇りを持っている。 皆を守りたい。 やっと皆を守れるようになったと思ったのに... ハチのこと...エイトのこと...カサネのこと... この会場にいる人々。 カナ...アスカ...ホル... ..."ロット"のこと。 「全然、守れてないじゃないか...」 自分自身に怒りを覚えたーーー こんなのヒーロー失格だ。 ヒーローになる、と決めた時。 ヒロの力になりたいと思ったーーーそれは本心。 でももう一つ、理由がある。 「っ!!」 攻撃はその間も絶えず降り続ける。段々と避けきれなくなってきて、体を攻撃が掠める。 ヒーロー活動をするヒロを見て、最初は・・・好奇心だった。やってみたい、と思って。 でも、仕事をするヒロを見ていくにつれて...心の中で、ある感情が湧き出てきた。 ・・・許せない。 人々の平和を脅やかす敵達。 そんな奴らから、人々を守りたい。 ・・・いや、守る。 「守るんだ!」 武器を掲げる。インクを集めて、集めてーーー 「はぁーーーっ!!!」 7Kめがけて、ナイス玉を投げる。 命中したかのように思われた。 「...本当に?」 「っ!?」 ミントの背後から、7Kの声が響く。 「センパイっ!!」 「なん、で...うしろ...」 「本当に守りたいだなんて思ったの?本当に力になりたいだなんて思ったの?」 「...どういう意味だ...私は...」 「いいや、違うね」 ミントの手足は、拘束されたように動かない。 「君は最初から最後まで、守ろうだとかそんなこと、全く思っていない。あるのは復讐心...あるいは見栄...劣等感...嫉妬...違う?」 「ふざけるな...私は人々を守る為に......!」 「ああ..."一緒"なのか、あのタコ達と...」 7Kはミントを指差した。 「真実を認められない...受け入れられない...そんな愚かな感情から、記憶を消し、創り出した嘘を信じるーーー、可哀想にね。」 「何を...言って...」 7Kの手先から、剣が現れる。 「おっと、話しすぎた...そろそろ終わりにしないとね」 剣を持った7Kが、ミントに近づく。 「センパイ!逃げて!!」 カサネがミントの元へ走り出す...助けようと手を伸ばすが...間に合わない。 「じゃあね、さよなら」 ミントの瞳に、剣先が映る。 鈍い音がしたーーー...... 「・・・は?」 7Kの腕に剣が刺さっている。 「センパイ!大丈夫ですか!?」 腰が抜け倒れ込んだミントの体を、カサネが支える。 「大丈夫だ...、けど...一体何が起きて...」 ミントもカサネも、7Kをその目から離さず、その光景を眺める。 「なんで剣が...っ!?」 7Kは突如として床に突っ伏し、手をつく。 「...っ...また電波か...?いや、違う...これは...」 「間に合った!」 ミントとカサネの前に、何かが現れるーーー 「シャル...?」 「ごめん!待たせたね!」 シャルがミントとカサネへ駆け寄る。 「幽霊も手が震えるんだな...」 「ちょ、ちょっと何の話...?ともかく、二人が無事で、よかった...!」 シャルが二人に抱きついた。・・・腕の先が体をすり抜けている。 「シャル、貴様...っ、何を...」 「あれで終わりだと思った?私たちはね...ずっと準備してきてたんだよ...この日の為に!」 ジャラジャラと金属音が響き渡る。7Kの体を鎖が拘束していく。 「こんな...もので...」 7Kが何かをしようとするーーーしかし、7Kの周りにノイズが走り、空中にいくつもの画面が映しだされる。 「やっと捕まえた」 どこからか、二人のイカが現れる。 「これで終わりだよ、7K」 「紅...いや、"リーダー"...それに、焦げ髪のイカ..."おこげ"...」 「あたし達の"名前"...覚えていたんですね」 現れた二人は、あの医者のイカと、看護師のイカだった。 「そんなに俺を捕まえたいのか?」 「ええ。聞きたいことが沢山あるの。...あなたをこうして捕まえる日を、ずっと待っていたんだよ、7K」 「今お前を捕らえているその鎖...壊そうとしても無駄だよ。それはかつてお前を捕らえた時に使ったものと同じものなんだから」 7Kは鎖を壊そうと何度も何度も試みたようだが...全て失敗に終わったようだった。 「...確かに、この鎖を壊すのは無理だな...何で出来てる...?普通の金属ではない...それに何重にも力を無効化する保護をかけた跡がある...面白いね」 「お前はもう何もできない...!おとなしく捕まれ、7K...!」 7Kは辺りを見回す。シャルがミント、カサネを大急ぎで避難させている。 散らばった剣や弓の跡。地面はえぐれて、空中には画面がいくつも映し出されている。 「...こんなので無効化できると思うな」 ドォン! 鼓膜が破れそうなほどの音が鳴る。 辺りに散っていた剣や矢が、一箇所へ集まっていく。 「っ!まだそんな力が...!」 「"リーダー"!バリアを!あれも鎖と同じものです!早く7Kに...」 「"俺に"?俺に使ってどうするんだ、それを」 「何...?」 「"リーダー"!左!」 「左...?」 "リーダー"が左を向いた瞬間、その首のそばを、剣が通り過ぎていく。 「っ!?」 "リーダー"は咄嗟にバリアを展開し、その攻撃を防いたが...その瞳には、信じられないものが映っていた。 「なんで...君が...」 剣や矢が集まったその中から、人影が現れる。 緑インクで、短髪。皆が憧れ、尊敬し、畏敬する人物。 「俺の体が使えないなら...誰かの体を使えばいい」 7Kの声が響く。 そこには、剣を持ち、"リーダー"と"おこげ"に剣先を向ける、ロットがいた。 【第二十九話終わり 第三十話に続く】