読むだけです。 色を眺める子供がクラゲを描いた話。
色が大量のこの世界...いや、視界と言うべきかな。 わたしの見る視界は、色が散らばって、まるでおもちゃ箱をひっくり返したような、足の踏み場もないような、そんな世界。にごった極彩色がわたしの目の中で撒き散らされている。 人の多い場所は、色が大量で、耳を塞ごうと目を閉じようとその眩しくうるさい極彩色はわたしを閉じ込めていく。その状態で誰かと話そうとしたら、あたりの色でわたしの声も相手の声もぐちゃぐちゃに塗りつぶされる。 やっぱり人の少ないところのほうが好きだ。 わたしの家の近くで人の少ないところと言えば、小さい砂浜くらいしかない。海の静かな波の色と、穏やかな砂浜の色と、その下を生きる生命の色...そういう物が好きだ。誰かとうるさい中で話す必要もなく、一人でのんびりできる場所。 だから、その小さな砂浜にはよく行く。ほぼ毎日と言っていいくらいだ。海に行くのはわたしにとって、特別でもなんでもない、日常だった。 ある日スコップを持って海に行って、しゃがんでぼんやりと透き通る海を眺めていたら、一匹のミズクラゲが海の青色に現れた。 海にミズクラゲがいるのはよくあることだが、そのミズクラゲは不思議な色だった。いや、普通のミズクラゲの色だけど、わたしには不思議な色だった。そのミズクラゲは私を見ていたような気がする。 ミズクラゲの少し遠くをぼんやりと眺めて、このミズクラゲは何を見ているのだろうかと思った。わたしの色とはまた違う色を見ているのか、色を見ているわけじゃないのか......地上を見ている?地上を望んでいる? わたしは立ち上がって、スコップを持って、走って家に帰った。 わたしは、その特別な色を、描きたいと思った。