ロゴ製作者が通るぞーー(?) ※大捕捉① アトリェの過去について ・アトリェはロシアの小さな村に生まれた。6人兄弟の二女で、高校生のころ日本に移住した。日本に居住した理由として、出身の村は貧しく、都市部とも離れていたため全く発展していなかった。その上貧乏だったので早く独り立ちをしたいの一心で、周辺国で安全な日本に移った。 実家からの仕送りを頼りに一人暮らしを始める。だが、世界はそんなに甘くなかった。自分がロシア人というだけで周りから冷たく無視をされ、唯一仲良くしてくれていた友人も彼女から離れていった。 でも彼女は家族のために一生懸命に勉強をした。学年のトップに上り詰めるまで彼女は努力をした。だがクラスメートに陰湿ないじめを受けたり、陰口を言われるなど徐々に彼女の心を蝕んでいった。 そしてついに大学入試を経て良い大学に合格した。そんな矢先、彼女の母親からある一報が入った。 彼女の地元である州が数か月前から独立運動を始め、政府が州の人間の多くを逮捕・殺傷したこと、そして父親、妹が殺され、兄、弟が捕まったことを知った。 彼女は泣いた。ただでさえ不安や恐怖に駆られていた日々が、さらに暗くなった。 それから反骨精神で彼女は更に勉強熱心になった。家族を助けなければ。 大学に入学してから数週間後、家族からの仕送りが来なくなった。家族も大変なのだと思い、彼女はバイトと大学を両立することにした。 だが彼女は恵まれなかった。大学は順調だったものの、バイトは悉く落とされた。唯一受かったバイト先はコンビニの店員だった。だが彼女の性格故に店長やバイト仲間からには冷たくあしらわれ、毎日謝罪してばっかりの日々だった。 いつしか彼女は自分を塞ぎ込み、「私が悪いの……全部…。」と自分の弱さの所為だとしていた。 次第にバイトも休むことが多くなり、ついには自主退職をした。 なんとか大学だけは行こうとしていた。そして彼女が大学一年生の頃、事件が起きた。大学校内で窃盗が起きたのだ。アトリェ自身に被害はなかったものの、濡れ衣を着せられてしまった。当時現場である講堂にはアトリェと数人の学生がいた。皆は犯人が誰か知っていた。だが犯人から口止めをされていたため、誰も言えなかった。 アトリェは停学を言い渡された。 彼女にとってそれは絶望でしかなかった。「なんで私が…」「どうしてみんな……」 しばらくして彼女は家から出なくなった。「自分が居ることで、周りに迷惑をかけてしまう」と。 彼女は既に限界だった。いじめ、家族の死、冤罪。幾度となく降りかかる不幸に耐えきれなくなってしまった。 「…ごめんなさい。お母さん。私には、もうどうにも出来なかった。夢も叶えられなかった。」 「未熟で、ごめんなさい。」 手軽に買える縄を近所で買い、縄を天井から垂らし、椅子に立ち、首を縄にかけた。 彼女の目には涙が浮かんでいた。まだやり残したことがある。でも、それはもう叶わぬ夢となった。 椅子から足を離し、体が宙に浮く。 意識は段々と遠のいた。 …はずだった。 突如として縄が切れ、彼女の体が床に叩きつけられた。 彼女自身も何が起きたのかすら判らなかった。ただ唯一確信を持てるのは、「自然に切れた訳ではない」ということ。 この時、「なわ」が無断で彼女の体に取り憑いた。彼女を死なしてはいけないと、直感で理解した。 だがアトリェは知る由もなく、自尽を何度も図った。 「なわ」はそんな彼女が心配になった。そこで、「なわ」はアトリェの前に現れ、彼女に対してなぜここまで自ら命を断とうとするのか聞いた。 アトリェは「なわ」に全てを打ち明けた。それを聞いた「なわ」は、「今まで辛かったね。よく頑張ったよ。でも、お願い。命だけは大事にして。」 「…でも、私を必要とする人は居ないから…。」 「僕がいるから!君は、僕のために生きて、僕は君のために生きる、いい?」 「えっ…?あ、うん…」 こうして彼女らは半ば強制的に協力関係となった。 今となっては2人は仲の良い親友同士となり、2人一緒に居る姿をよく見かける。 今でもアトリェは夢を諦めず、お金を稼ぎ家族を助けてようとしている。 ※大補足② 「なわ」の過去について。 ・「なわ」の前宿主は手工芸の二十代の若い職人だった。 彼の手先の器用さは群を抜いて素晴らしく、彼の雑貨屋に人が来ては、売り切れるを繰り返していた。 しかしそんなある日、彼の所属する工芸組合から名前が除籍されてしまった。理由は不明だが、考えうる原因として彼が有名になり過ぎてしまったからだという。 かつては組合が開いた雑貨の物産展に来る人は町の一部の人間だけだった。だが彼が組合に参加した後、彼の名が上がるに連れて来客数は増え、気づけば隣町の人まで来るようになっていた。 聞こえは良いが、組合の人々はそれを良く思っておらず、少人数の来客を良いと思っていた。それ故に組合と彼との相性は次第に悪くなっていった。 除籍を受けたその日から彼の扱いは酷くなり、町からも蔑ろにされてしまった。 だが彼は、「俺は別に気にしてないよ。いつか彼らが俺を見直してくれるように努力しなくちゃな。」と自分の未熟さの所為にした。 しかしそれが全ての原因だった。己が身を蝕み、町の中にあった彼の雑貨屋は気づけば町の外れにある山奥に移っていた。 その時、彼はある存在に出会っていた。縄で装飾品を作っていた際に、縄の怪異が現れた。さほど彼は気にしておらず、「なわ」が取り憑くことも気にしなかった。逆に「なわ」の力を使って作品を沢山作りあげた為、関係はWin-Winだったそう。だが、それでも町の人の迫害は続いた。 そしてある日の夏、彼は「なわ」を連れて離れの作業場に向かった。それはとても暑い日だった。日差しが容赦なく燦々と照らす。 森の中にある彼の作業場である小屋は木々の影に覆われていて、少し涼しかった。 彼は作業場に着くや否やこう言った。 「君へのプレゼントを作るから、ここら辺で待っててね。」 そう言い残し、彼は作業場に消えていった。 作業場の近くには木漏れ日に照らされている小さな花畑があった。「なわ」は宿主が帰って来るまでの間、そこで待っていた。「花冠とか似合いそうだな〜」 「なわ」も宿主のために花冠を作り、プレゼントするそうだった。 だが、彼は戻ってこなかった。アブラゼミがけたたましく鳴いている。日が傾いた。しかし彼は戻らない。 「なわ」はそんな彼がとても心配になり、作業場の入り口から様子を伺った。 ヒグラシが鳴いている。 そこには首が縄に括られ、宙に浮いた宿主の姿があった。 「なわ」は急いだ。彼を助けなくては。 「なわ」は彼の首に括られている縄を丁寧に外し、床に寝かせた。 そして彼を激しく揺さぶった。 …だが、時は無常。もう彼は息を引き取っていた。 「なわ」は泣いた。泣いて泣いて泣きまくった。彼にしがみつき、闇が辺りを飲み込むまで泣いた。 セミが鳴き止み、コオロギが鳴く。 辺りは既に夜の帳に包まれていた。一つの電球に照らされた薄暗い作業場に、1人。 「なわ」は顔を上げた不意に作業場の作業台に置いてあった一つの作品が目に入った。 「なわ」は一瞬で理解した。彼が最期に遺した自分へのプレゼントだと。 「なわ」はそれを自らの身体に着け、宿主を外まで運び出した。空は嫌なほど晴れていて、星が光っていた。その後警察に相談し、遺体を火葬してもらい、宿主は「なわ」のもとに帰ってきた。 「なわ」は、大好きな宿主が自分のもとへ帰ってきてくれたことが、何よりも嬉しかった。
曲:ヒガンバナが泣いている / ଳ