『__掃除の時間です。当番の人は、 担当場所に向かってください』 私の担当場所は、図書室。 微かな本の香りがします。 「……」 私は、黙ってほうきをはいていました。でも… 「……はぁ…」 頭の中は、アキトくんでいっぱいでした。ありさちゃんに「恋」について教えてもらってから、アキトくんに対する気持ちがより強くなってしまいました。 ずっと、アキトくんのことを考えてしまう。そのせいか、私の成績が少しだけ下がってしまいました。 __どうして、こんなに夢中になってしまうのでしょうか。 「ゆ~うな!」 「ひゃいッ!?あっ…アキトくん!?」 「そんな驚かんといてや~、泣くぞ~。…あ、そういや、次の時間何の授業やっけ?」 「え、えっと…れ、歴史だった気がします…」 「歴史!!よっしゃ!!神!!!ありがと優奈!!!」 「はっ…はひ…」 「や~、楽しみ~♪」 そう言いながら、アキトくんは去って行きました。…今、アキトくんの笑顔を間近で__… 「(…いやいやいや、何を考えているのですか!)」 自分の頬を思いっきり叩いて、気を引き締め直そうとしました。…でも、先程のアキトくんの素敵な笑顔が頭から離れなくて…… 「(もう…私、おかしくなってしまいましたね…)」 そう思いながら、ため息をついた瞬間… 「…ねー優奈ちゃん、どうしたの?顔、真っ赤だけど…熱でもある?」 「ひゃぇッ!?…あ、何だ、ありさちゃんでしたか…いえ、全然大丈夫です!熱などありません!」 「そう?それなら良いけど…というかさ、この頃の優奈ちゃん、変だよ?」 「へ…?」 「最近ボーっとしてる時があるし、顔がずっと赤いし、ぼそぼそ何か呟いてるし…ホントどうしたの?」 「えぇ…っとですね…」 「む~?怪しい…まさか、隠し事?」 「え!?ち、違いますよ!」 「ウソだぁ!私分かるよ、いつもの優奈ちゃんは、そんな感じじゃない!」 「っ……」 「…ねぇ、もし隠し事があるなら、私に話してみて。可能なことだけでいいから。絶対に誰にも言わない。約束する」 「……」 真剣で、だけどいつもの優しさがある目……。ありさちゃんになら、話せるかもしれない。 「……分かりました。ただ今は掃除中なので、放課後にしてくれませんか?」 「ん、了解!」 「すみません、ありがとうございます」 「どういたしまして!」 そう言って、ありさちゃんは去って行きました。…ありさちゃんは、受け入れてくれるでしょうか。変だと思われないでしょうか。…いや、大丈夫。 ありさちゃんになら…本性を全て晒け出せるかもです。 そんな淡い期待を抱きながら、私はほうきを動かし始めました。 --------------------------- 放課後。大きな庭園の噴水前のベンチ。 「優奈ちゃん、おまたせ!」 「あ、ありさちゃん」 ありさちゃんがこちらに駆け寄ってきて、 私の隣に座りました。 「…さ、優奈ちゃんのお悩み、聞かせて?」 「…はい」 私は、ゆっくりと深呼吸をしました。 「…じ、実は…最近好きな人ができたというか…」 「…えーーー!?!?!?」 「ちょっ、ありさちゃん!声が大きいです!!」 「あっ…ごめんね?ふぅ…で、好きな人ができたのね?それがお悩み?」 「そう…ですね。何故かその人のことばかり考えてしまうんです。授業中も、ましてや家にいる時も…」 「うんうん、そっかぁ…分かるよぉ…」 「だから、私はボーっとしたり、独り言を呟いたりしていたんだと思います」 「なるほど、そういうことかぁ…」 「自分でも、これは恋だと自覚しています。でも、この気持ちを、どうすればいいのかなって…」 「うんうん、そっかそっか…じゃあ…」 「親密を深めることだね」 「……はい???」 「優奈ちゃん、その人とお付き合いとかしたいの?」 「はいぃ!?おっ、お付き合いとかそんなのでは……ま、まぁ…できればですが…もっと一緒にいたい、ですね…」 「ふふ、ちゃんと本当の気持ち、言えてるじゃん♪」 「っ……や、やめてくださいよ…」 「ふふっ…そうだね。お付き合いとかそういうのは、 まだ早いかもしれない。だから、積極的にその好きな人に話しかけに行ったりして、まずは「友達」から始めるの」 「まずは…友達…」 「そう、一度信頼を深めてからの方が、告白もやりやすいと思うの」 「そうですか……って、告白ぅ!?!?無理無理、私には無理ですよぉ!!」 「ま、まぁ、最初はそうなるよね…(( でも、優奈ちゃんなら大丈夫。私も応援するよ!」 「うぅ…ありさちゃん…ありがとうございますぅ…」 私は、少し微笑ましい気持ちになりました。 …本当に、友達がありさちゃんで良かったです。 「……あ、それと、私もここまで深掘りするのは よくないと思ってるんだけど…その好きな人って…誰なの?」 「えっ!?えっと…そのぉ…」 「無理に答えなくて大丈夫だよ!?ただ、優奈ちゃんのことを応援するためには、もっと詳細を知って おかなきゃな~…って思って…」 「そ、そうですか…うーん……」 私は、一瞬どうしようか迷いました。でも、目の前にいる人は、一番信頼できる人。ありさちゃんになら、大丈夫。 「……分かりました。言います。少し耳を貸していただけませんか」 「ん、分かった」 「……ふぅ…」 『…アキトくん』 『…え?』 『で、ですから、私の好きな人はアキトくん。井上アキトくんなんです』 「……」 「あ、あの…?」 「……えぇぇぇぇぇぇーーーーっ!?!?!?!?」 「ありさちゃん!!!」 「ホント!?あのアキトくん!?」 「声量を下げてください!!」 「あっ…またやっちゃった…ゴホンッ」 ありさちゃんは我に返ったあと、咳払いを一つしました。 「そっかぁ、じゃあさ、好きになったきっかけとかある?」 「えぇ!?…は、恥ずかしいですけど…私が転校してきて間もない頃、私、佐藤さんたちに暴言を吐かされていたんですよ。その時にアキトくんが助けてくれて…それがきっかけですね」 「へぇ…そうなんだ、素敵~…!」 「うぅ…恥ずかしいです…」 「そんな恥ずかしがらないで!私、優奈ちゃんの恋を全力で応援するよ!ね、一緒に頑張ろう!」 そう言って、私の手を取りました。 「ありさちゃん……そうですね、私、頑張ってみます」 「うん、恋心が叶うといいね!」 「あの、ありさちゃん。もしよければ、仲良くなる為に色々と教えてくれませんか…?」 「勿論!私が全部教えてあげる!」 嗚呼、本当に、この人に相談して良かったです。…親密を深めるためにも、頑張ります! --------------------------- その頃、優奈たちの近くの木影。 一人の少女が、妬ましそうに優奈を睨んでいる。 「あの子…アキトくんに好意を…!?許せない…私のアキトくんに軽々しく近づこうとするなんて…!」 ギリギリと、奥歯を嚙みしめた。 「…これは、止めるしかないわ。あの子に現実を見せてあげなくちゃ」 そう言って、少女は意味深な笑みを浮かべた。 --------------------------- 次の日、朝休みの時間。 「まずは友達から…でしたよね。まずはアキトくんを探さねば…」 私はアキトくんを探すために、学園中の色々なところを探しました。そして… 「…あ、いました」 売店近くの自動販売機。イチゴオレを飲んでいました。 行かなければ。後で後悔してしまう。その一心で、私は足を動かしました。 「あっ、あの!アキトくん!」 「はいはーい?…あ、優奈やん。おはようさーん!」 「はっ、はい…おはようございます…」 アキトくんの笑顔に心臓がやられそうになっても、私は必死に言葉を出そうとしました。 「あの…アキトくん。今日の昼食…いっ、一緒に食べませんか…!?」 …言ってしまいました。アキトくんからの返事はなし。 私は、ゆっくりと片目を開けました。 「あー、ええで!」 「…へっ…?い、いいんですか…!?」 「うん、ええで!!」 「あっ、その…ありがとうございます…!」 「食堂で食うか?」 「はっ、はい。そうさせて頂いても…?」 「了解!楽しみにしとくわ!じゃ、俺教室戻るわ」 「は、はい…」 「……」 誘えた…誘えました! 今までにないくらい嬉しくて、飛び上がりたいほどでした。 「ふふ、お昼が楽しみです♪」 --------------------------- ーお昼ー 「…さて、そろそろ食堂に行く時間ですね…」 「そこのアンタ!アンタよ。眼鏡の!」 「…え、私ですか…?」 「そうよ。アンタよ!」 食堂に行こうとすると、誰かに止められました。 「あっ、あの…何か御用ですか?」 「ちょっとアンタに伝えたいことがあってね…あ、私は「赤塚美咲」。よろしくね」 「は、はい…宜しくお願い致します」 「話を引き出すけど…アンタ、アキトくんのことが好きなの?」 「…え…??」 「だから、アキトくんのことが好きなのか聞いてんの」 「えっ、ええ…!?そ、それは……ま、まあ…そうですね…」 「ああそう…やっぱりそうなのね…」 「…?あ、あの…?」 「…私ね、アキトくんと、保育園も小学校も同じだったのよ。だから、私の方がアキトくんのことをよく知ってる」 「へぇ…凄いですね」 「関心するんじゃないわよ。何が言いたいかって言うと、アンタはまだ下っ端。アキトくんのことをまだ何も知らない」 「え…」 「アンタみたいな陰キャがあのアキトくんとお似合い?笑わせてくれるわね。私の方がね、アキトくんと一緒に居てる。アンタにアキトくんは譲らないわ。アキトくんは私のものだって決まってるんだから。気安くアキトくんに近づかないでよね。アンタは諦めたら?どうせアキトくんは私のことが好きなんだし」 「っ……」 「言いたいことはそれだけよ。じゃあね。邪魔者」 「なッ……ちょ…」 そのまま、美咲さんは行ってしまいました。…今、私は何を言われたのでしょうか…もしかして、美咲さんもアキトくんのことを__… --------------------------- 「__優奈ぁ、おまたせ~!!」 「…あ、アキトくん。早いですね」 「そらそうや!あんま相手を待たせたくないからな!!さ、はよ入ろ。腹減った~」 「そ、そうですね…」 数分後。 私は、いつものミートソーススパゲティ。アキトくんは、焼き魚定食。 「いただきま~っす!!」 「いただきます…」 いつもなら、進んで食べるはず。でも今回は、フォークが動かなかった。 『どうせアキトくんは私のことが好きなんだし』 先程の美咲さんの言葉。あれが頭から離れなかった。確かに美咲さんはアキトくんと幼馴染なので、アキトくんのことを誰よりもよく知っているはず。 …でも、あんなに強く言わなくても良いじゃないですか… 「……優奈?食べへんの?」 「…あ…すみません」 「何か…元気ないで。どしたん?」 「いえ、何でもないです…」 「あそ~、それならええけど…」 「……あの、アキトくん」 「ん?」 「その…アキトくんは…す、好きな人はいるんですか…?」 私は、勇気を出して質問してみました。 「……え、急にどないしたん!?」 「い、いえ!ただ気になっただけです」 「う~ん…ユウのことも大好きやし…伊藤さんも大事な人やし…よう分からん。いっぱいおる!」 「…それは、友達としての"好き"なんですか」 「え、そうやけど…」 __違う。 私は。 「私は……」 「…?」 「……いえ、何でもありません」 「あ、そう?じゃ、はよ食べよ!」 __聞かないでおきましょう。きっとこれは、私のただの欲望。我儘なんですから。 --------------------------- 数日前。 「……あふぁ…やば、超眠い……」 天蘭学園、早朝。俺は部活の朝練で学園に来ていた。 俺は元々早起きは苦手だったから、こんな朝っぱらから学園に来るなど地獄も同然だった。 「あ゛~…めっちゃめんどいねんけど……」 ボーっとしながら、人気のない廊下を歩いてると… 「……♪♫」 「…ん?優奈か…?」 ※メモクレに続きます。
※メモクレの続きです。 ショートヘアに眼鏡。間違いなく優奈やった。 「優奈ぁ~!」 「わッ!?あ、アキトくん!お、おはようございます!」 「な、なんかえらい緊張しとるやん。ま、ええわ。こんな朝早くから何しとん?」 「あ、朝早く目覚めてしまったので、早く学園に行っておこうかと…それで今、美化委員の仕事を終わらせようと思って!アキトくんこそ、こんな早朝にどうしたのですか?」 「あ~、俺ね。陸上部の朝練。マジしんどいねんけど…」 「そ、そうなのですね!そういえばアキトくん、来月大会でしたよね?私、見に行きます!なので頑張ってください。一番に応援してますよ!」 「…え…」 「…?どうしたのですか…?」 「いや、なんもない。朝練行ってくるわ!」 「はい。行ってらっしゃい!」 「っ……」 別に、何でもない。何でもないはずやった。だけど… 「…何でなんよ…」 変に、胸がザワザワする。 「よぉアキト、おはよ」 「ひゃぇッ!?な、なんやユウか…驚かせんといてや…」 「ああ、すまねぇすまねぇ(笑)…てかお前…顔赤いぞ。熱か?」 「はぇ…??」 自分の頬に触れた瞬間、分かった。顔が熱い。なんでや。熱もないはず… そういえば、優奈と別れてから、やたらに顔が熱いなと思った。 「……なッ…なんもないし!大丈夫やし!!」 「そ、そうか…?それならいいんだが…」 「ほ、はら!はよ行くで!!」 さっきから、変な気持ちになる。心臓がバクバクする。 __こんな気持ち、初めてやなぁ…何やろか… --------------------------- 放課後。 「はぁ…今日は色々と疲れましたね…」 美咲さんに言われた言葉、昼食時のアキトくんの返答。 「やはり…私はアキトくんと釣り合わないのでしょうか…??…いやいや!こんなマイナスなことを考えるのはやめましょう…」 我に返り、自分に強く言い聞かせました。 「さ、早く帰りましょう」 そう言って、帰ろうとすると__ 「……え」 「アキトくん!早くカフェテリアに行こーよー♡」 「分かった!!分かったから離れろや!!」 「えーやだ~!!」 「……な…」 目の前には、アキトくんの隣にべったりと寄り添っている__美咲さんがいました。 「そんな…」 「……!」 「あ…」 呆然としていると、美咲さんと目がばっちりと合いました。 「…ふふっ」 「っ…!」 そのまま、美咲さんは意地悪そうに笑いました。 …もう、見ていられない。 気がつけば、私は参考書のこともすっかり忘れて、走り去っていました。 「……おい、どしたん」 「ん~?何でもなーい!ほら、早く行こ!」 「……おう」 --------------------------- 「……はぁ…はぁ…」 校門前。 「な、何だったのですか……」 美咲さんとアキトくん。すごく__距離が近かった。まるで、恋人同士のような…… 「っ……」 __ぽたっ 気がつけば、私は泣いていた。恥ずかしい。泣き止みたい。でも、涙は止まらない。 「…どうして…やはり、私とアキトくんでは…駄目ということですか…?」 自分に問いかけても、分からない。答えが出てこない。 「……やはり…恋愛__恋とは、難しいですね…」 そう言いながら、しゃくりあげていた時。 「__優奈ちゃん!?どうしたの!?」 「……え…ありさちゃん…」 一番の親友の姿が、目の前にあった。 「なっ…ど…何で泣いてるの!?ほら、涙拭いて!」 「すみません…ありがとうございます」 ありさちゃんが渡してくれたハンカチで、涙を拭いた。 「どうしたの…?何が原因なの?ほら、私に話してみて」 「あ…ありさ…ちゃ……ぅうっ…」 ありさちゃんの優しい心が嬉しくて、私はまた泣いてしまいました。 「大丈夫大丈夫。ほら、あそこに座ろう」 ありさちゃんはそう言いながら、噴水前のベンチを指差しました。 --------------------------- 「優奈ちゃん、落ち着いた?」 「はい。すみません…ご迷惑をお掛けして…」 「ううん、全然!…それで、何があったの?可能な限りで良いから、話してみて」 「……実は…」 私は、先程あったことを全て話しました。美咲さんとアキトくんのこと、恋は難しい、ということ。 「そっか…辛かったよね…」 「正直、そうですね…私は__ずっと片思いのままで終わってしまうのでしょうか…?」 「うんうん…分かった」 「じゃあ、アキトくんに想いを伝えなきゃ」 「……え!?」 「優奈ちゃん、アキトくんのことが好きなんでしょ?」 「ええ、はい……」 「じゃあ、ずっと止まってたら駄目。どれだけ想っていても、直接言わないと伝わらないよ」 「そうだと分かっているのですが…告白など私には恥ずかしいですぅ…ねえありさちゃん、言葉で伝える以外でも、手紙などで伝えても良いですか…?」 「うーん…別に良いけど、私は言葉で伝える方が良いと思うな。ほら、アキトくん、ああ見えて結構天然で鈍感だから!」 「え、そうなのですか…?」 「うん!だから、自分の気持ち、アキトくんに全部言っちゃった方が良いと思うんだ」 「……」 「私から言えることは、これだけだよ。…もう遅くなっちゃうから、一緒に帰ろう?」 「はい…ありがとうございます…!」 私は嬉しくて、ありさちゃんの手をぎゅっと握った。 --------------------------- 優奈とありさが帰った後。 「アキトくん!今日は楽しかった♡」 「うん、それなら良かったわ…」 「明日はどうする?私と一緒にお昼でも食べる?」 「いや、明日はちょっと__」 「え~駄目~!?私ぃ、アキトくんと一緒にいたいの!ね?お願ぁい…」 「…こいな」 「え?」 「だから…しつこいな言うてんねんよ!!」 「っ…!?」 「…あ、ごめん。でかい声出して…正直言うて、美咲、しつこいねん。どれだけ断っても強引に誘ってくるし…そのせいで俺、ユウと遊ぶ約束が美咲のせいでなくなったんやけど」 「ご…ごめん…ごめんアキトくん!」 「謝ってくれたのは嬉しいんやけど…もう俺、美咲と関わりたくない」 「…え」 「もう嫌やねん。美咲と一緒にいるの。…そういうわけやから、俺もう帰るわ」 「ちょ…待ってよ!!…そんな…アキトくん、サイテー!あの眼鏡女のせいよ!!…でも、諦めないんだから…!」 --------------------------- 次の日。 告白する勇気は、正直言ってなかったのです。だけど… 「…ありさちゃん、私、決めました」 「アキトくんに、告白します」 「…えっ!?!?」 「あの後、考えたんです。やはり、想いは口にしないと絶対に伝わらないと。成功しなくても、想いを伝えられたらそれでいいって。はっきり言う方が大切だって。このような考えが出来たのも、ありさちゃんのおかげです。ありがとうございます」 「優奈ちゃん…!偉い!偉いよ!頑張って!私、応援してるから!!」 「はい、ありさちゃん、ありがとうございます!」 --------------------------- 夕方。 「疲れたぁ~!!はよ帰ってゲームしたい…」 やっと授業が終わり、へとへとで靴箱まで歩いた。 「えーっと俺の靴……あ…?何か入ってる…?」 俺の靴箱の中を見ると、何か一枚の紙切れが入っていた。 『話があります。庭園の噴水前に来てください』 「話…?なんやろ?聞きたいことか?だったら直接言えばええのに…まあいいわ、はよ行こ」 鈍感で天然すぎるアキトは、まだ気づいていなかった。 --------------------------- 「誰や~?俺を呼んでる人はぁ。…ん?」 「…優奈…??」 「あっ、アキトくん!!来てくれたんですね…?」 「うん、なんやろな思て…」 「と、とりあえず…来てくれて、ありがとうございます」 そう言って、私は、深く大きな深呼吸をした。 「…アキトくん、覚えていますか?私が転校してきた初日の時__佐藤さんたちにいじめられていたところを助けてくれましたよね」 「え?……あー、確かそんなことあったな!」 「それから私……おかしくなってしまったんです」 「……え、俺何かした…??」 「いえ…その日から、ずっとアキトくんのことを意識するようになってしまったんです。最初は、分からなかったんです。何故自分がこのようになってしまったのか。だから、ありさちゃんに聞いたんです。私はどうしてしまったのかって。そして、分かったんです」 「私、アキトくんのことが好きなんだって」 __言ってしまいました。 「……へ…」 いつものアキトくんからは考えられないほど、か細い声。次の瞬間… 「っ…!?」 アキトくんの顔が、一瞬にして耳まで真っ赤になった。 「いや、ちょッ…そ、そんな真っ直ぐ言われたら驚くやろ…」 「すみません。ですが事実なので……私、このままでは駄目だと思って、今日、アキトくんに本音を伝えに来たんです。……本題に戻りましょう。私、気づいたら寝ても覚めてもアキトくんのことばかり考えてしまうようになってしまったんです。それくらい、アキトくんを想っているんだなって…自分でも自覚しました。……だから、アキトくん」 「私と、お付き合いして頂けませんか…?」 私は、深く頭を下げた。顔が異常なほどに熱い。 周りが、しんと静まり返った。恥ずかしい。今すぐここから逃げ出したい。 「……優奈」 「はいッ!?」 反射的に顔を上げてしまった。 「(…もしかして、引かれてしまいましたか…!?)」 不安だった。けれど__ 「……やばい、めっちゃ嬉しい」 「……へ…?」 「いや、俺も…優奈のこと、好きやったかもしれんくて…」 「……えっ!?」 「優奈って、毎回正直やから…心の底から他人のことを応援したり、一緒に喜んだり悲しんだりしてくれるから、「また頑張ろ」って思えんねん。俺、優奈のそーゆーとこが好きになったかもしれへん」 「…へ…あの……」 「__だから、」 「こちらこそ、お願いします」 「……!」 嬉しい。心の底からそう思った。でも、後から色々な感情がこみ上げてきて… 「…うっ…あ、ありがとうございますぅ……」 「…ちょ、どしたん!?何で泣いとん!?」 「すみません…すごく嬉しくて…」 「あぇ…ほ、ほい!ハンカチ!涙拭いて!」 「……もう、そういうところですよ。また好きになっってしまったじゃないですか」 「なッ……!?は、恥ずかしいからやめぇや!!!」 __そういうところも好きですよ。 言いたかったけれど、心の中に隠しておきました。これ以上言うと、私の理性が保てなくなると思うので… この人を好きになって、本当に良かった。 心からそう思いました。 --------------------------- 「おめでと~~う!!!」 「わっ!?」 次の日。学園に来るなり、ありさちゃんが抱きついてきた。 「告白、成功したんでしょ!?」 「…え、何で知ってるのですか…??」 「えへへ…実は…隠れて見てたんだよね…」 「えぇ!?ちょ、恥ずかしいですよ!」 「ごめんごめん!大丈夫か心配だったから…」 「んもぅ…」 「…あ、ほら優奈ちゃん、マイダーリンのお出ましだよ!!」 「だっ…ダーリンとかそんなんじゃないですよ!」 「なぁアキト~、お前優奈と付き合ったんだろ?」 「はい!?ユウお前何で知っとるんや!?」 「ありさから聞いた~♪」 「えっ何で伊藤さんも知っとるん??」 「何か昨日、こっそり見てたらしいぜ」 「マジか恥ずかしいわ!!!」 「まあまあ落ち着け…あ、噂をすれば、マイハニーが待ってくれてるぞ」 「マイハニーちゃうし!!!」 「あっ…アキトくん、おはようございます!!」 「あ…おはよ~さん」 「…な、何か緊張しますね!」 「せやね!」 「ほ、ほら!授業始まってしまいますよ!早く行きましょ!!」 「そ、そうやな!はよ行こ!」 まだ不器用な私たちですが、アキトくんのことを__好きという気持ちを、大事にしたいと、そう思いました。 -end-