第3章 秋のお客様 「このおにぎり、こんなに大きくて、しかも具がたくさん入っているんですよ!!お値段は、なんと、放送後30分以内のご予約なら、5個で550円!5個で550円ですよ!安いでしょ。みなさん、メモのご準備をしてください―。」 博人は、学校に行く時間になり、広告ばかりのテレビを、パチリと消した。でも、なかなかそこから動けない。学校に言っても、デブだといじめられるばかりだし、どうしても行く気になれないのだ。それに何と言っても、広告でやっていたおにぎりが、とても美味しそうだったのだ。テレビの前でぼーっと立ち尽くしていると、 「博人、遅れても知らないからね。私はもう行くから。戸締まりお願いね。じゃ、いってきまーす。」 と、お姉ちゃんの菜緒が、バタバタと出かけていった。菜緒は、博人とは大違いだ。スタイルもほっそりしているし、髪も、黒くて、まっすぐだ。それに比べて、博人は、ぽっちゃりしていて、髪も、茶色っぽいくるくるだ。でも、博人には、驚くべき秘密がある。それは、家族にも言っていない。なにかというと...あ!もういかないと遅刻する時間だ!博人は、はっと我に返ると、ランドセルを背負って、家を飛び出した。でも、戸締まりは忘れていませんよ。 休み時間。博人は、今日も体育の恵先生のところへ行った。博人の秘密は、恵先生しか知らない。博人は、恵先生に、なにかをこそっと呟いた。すると、恵先生は、笑顔になり、扉にジャラジャラとかけてある鍵の一つに手を伸ばし、もう一つの手で博人の手をしっかり掴んだ。今から行く部屋は、完全防音の、レッスン室だ。この部屋があることは、恵先生と、博人しか知らない。 レッスン室につくと、博人たちは、テキパキと準備を始めた。ミュージックプレイヤーを、セットしたり、ドアをきっちりと締めて、鍵をかけたり、そして、30秒後くらいになると、恵先生は椅子に座り、博人は準備体操を始めた。そして、準備体操が終わると、博人は、 「ミュージックスタート!」 と、叫んだ。すると、激しい音楽が流れ始めた。それに乗って、博人は、これもまた激しいダンスを始めた、1曲終わると、休憩タイムだ。恵先生が撮っておいてくれた動画を見ながら、ダンスをじっくり見て、分析する。でも、ただ分析するんじゃない。恵先生特製のおにぎりを食べながらやる。そう、みんなはもうわかったと思うが、博人の秘密とは、ダンスがとても上手いことだ。 じゃあ、隠さないほうがいいのでは?と思ったと思うが、博人の体型を見ればよく分かるだろう。ぽっちゃり体型なのだから、運動は苦手と思われるのは、当然だ。それに、得意なものが、ダンスなので、女の子っぽいと思われるに違いない。だから、隠しているのだ。 というのが、博人の子供の頃の思い出だ。25年前と、同じ、おにぎりのCMが流れていたから、つい思い出してしまった。 「恵先生のおにぎり、また食べたいな。」 そう呟いた。その時、おとなになった博人は、あることに気が付きました。 (そういえば、俺の会社に、恵さんっているよな。その人って、もしかして恵先生!?たしかに俺が入社したとき、驚いていたよな。) そう気づいてしまったら、いても経ってもいられません。博人は、家を飛び出しました。 会社につくと、俺は、恵さんに訪ねました。 「あの、恵さんって、昔、小学校で働いていましたか?」 と、聞くと、恵さんは、少し驚いたように、でも、少し嬉しそうに、 「ええ。そうよ。あなたは、ダンスが得意な博人くんでしょ?」 と答えました。博人は、覚えていてくれたことが、嬉しくて嬉しくて、元気よく 「はいっ!」 と答えました。すると、恵さん、いや、恵先生は、 「また、おにぎり食べたい?」 と聞いてきました。博人は、何度も何度も首を縦に振りました。すると、恵先生は、言いました。 「じゃあ、ダンスを見せてくれないとね!」 博人は、困りました。会社には、学校のように、秘密の部屋がありません。どうしましょう。すると、恵さんは言いました。 「市立体育館に集合ね!」 博人は、そっか!と思いました。市立体育館なら、お金を払えば、貸し切りにできます。ということで、二人は、約束しました。 そして、約束の日。博人の、ダンスのキレは、衰えていませんでした、その様子を、恵さんは、楽しそうに見ていました。そして、1曲終わると、恵さんは、小さな頃のように、動画を見せながら、おにぎりを食べさせてくれました。その味は、思い出の味でした。
今回の物語について 青おむのルールである、 ①青春おむすび食堂が出てくること。 ②題名に関する言葉が出てくること を、破ってしまいました。すんません。 でもっ言い訳させてください。①は、ほんとにごめんなさいなんですけど、②は、スポーツの秋なんですよ!!信じてください!ね?